黄昏乙女×アムネジア 1 (ガンガンコミックスJOKER)

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本棚登録 : 848
レビュー : 55
著者 :
東和瞬/翻訳者さん Horror   読み終わった 

 「黄昏」とは「誰そ彼」と言う古い日本語から来る言葉で対面する人の顔を不明瞭とする夕闇時、殊に人と魔が混じり合う「逢魔ヶ時」との連想をもって語られます。
 それをタイトルにて冠する「乙女」とはこの作品のヒロインであり、主軸である「庚夕子」のことです。
 そして「アムネジア」とはギリシャ語を語源とする病名「記憶喪失」のこと。
 これら三つの複合する所がこの作品が何たるかを明確に指し示していると言えます。

 旧校舎にて年上のお姉さん、庚夕子さんに出会った主人公新谷貞一くんは自分を幽霊と名乗る彼女に振り回されつつも、噂を頼りに彼女の遺体を発見するが――、
 普通なら核心っぽいシーンまでたった三十ページ強、対する幽霊・夕子さんの反応もズッコケものです。
 この辺からこの作品がホラー一辺倒ではないということを力技で理解させられると思いますが、ではこの作品の主軸が何かと言えば、それは「夕子さん」その人に他なりません。
 人柱と言う後ろ暗い伝承と相反し、自らの死の記憶を持たずやたら明るく振る舞う彼女を一言で語るのは難しいですが、ここでは全体の話をしましょう。

 年上のおねーさんに翻弄させられる年下のオトコノコと言うフォーマットはメーテルと鉄郎のそれ、「青春の幻影」と言えばわかりやすいようですが、幽霊と生者のそれのはずなのに距離感は近しいのです。
 幽霊なのに見える聞こえる触れる、そして話せる。
 ただし、それは貞一君だけに、彼だけの物なのです。小悪魔的な魅力で主人公を振り回す夕子さんを魅力的と言わない人はこの作品の読者では皆無でしょう。

 作者は元々18禁畑から出てこられた方なのですが、それもあって登場する女性たちは夕子さんを筆頭に古良い絵柄でありながら肉感的でドギマギさせられるようなシチュエーションも数多いです。
 そのため、どう見ても高校生だろ! とツッコミをいれたくなる方は多いと思いますが、一話目から中学校が舞台と明示されています。
 そのため、思春期男子の色に染まりきっておらずどこか幼い主人公のほほえましさや明暗のコントラストが決まった全般の色彩によって色っぽくサービスシーンが多くとも品の無さを感じるのは難しいです。
 
 ストーリーはなぜか夕子さんが大なり小なり関わる「七不思議」の調査と言う形で早期に示されます。
 全体の構成としては名探偵兼××役の夕子さんにホームズ役の貞一くん、加えて依頼人役の元気娘「小此木ももえ」、とあと一人をレギュラーとしてそこに事件ごとのゲストが加わる連作短編としての性質も持ちます。
 人物相関などの把握もしやすく、十巻と言う中で着実に「夕子さんの過去を探る」という目的を絡めながら進んでいくのはパズルが組みあがっていくのを見ていくような小気味よさがあります。
 
 ミステリ的な見方でこの作品を見るのもある意味で面白く、この作品独自の「謎の解決」もワンパターンながら面白いでしょう。文字通り、謎を解決するのですから。
 前提条件として早くも述べられた「私以外の幽霊はこの学園にいない」という言葉から勘のいい人は読めたのではないでしょうか。
 
 導入編の第一巻ですが、色々な「起」があってなかなかに飽きさせませんよ。
 二人の出会いを代表的に予兆に満ちたと言いますか、この巻のみで完成度はなかなか高いのではないでしょうか。
 少し触れておくと、全十三話でアニメ化もされており、こちらもオリジナルながらもう一つのエンドと言う形で完結しています。
 背景美術の水準は非常に高く、登場人物をほぼレギュラーの四人に絞った構成の完成度も素晴らしい。
 すべての面で高水準でまとまったアニメです。こちらは余談でしたが、まぁまた二巻で。

レビュー投稿日
2014年6月26日
読了日
2012年8月19日
本棚登録日
2012年8月19日
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