シギント 最強のインテリジェンス

  • ワニブックス (2024年4月1日発売)
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インテリジェンスに対する、世界の常識と日本の非常識が理解できる一冊。

シギントはコミント(暗号解読、通信状況分析)、エリント(レーダー波分析)、フィシントなどに分類され、有事に備えて反撃対象の選定や行動予測に活用できる重要なインテリジェンスの一つ。
ヒューミントの対象者の通信状況など、ヒューミント支援としてもシギントは活用されている。
サイバー戦またはインターネット空間を介した積極工作では、シギント機関の調査情報や技術を活用している。

一方で、日本にはそもそも国家シギント機関がない。(自衛隊には軍の範囲でのシギント能力はある)
予算規模は別として、基本の組織編成、体制、思想などはアメリカをお手本とすると、
そもそもシギントを積極的に活用するという国家レベルの姿勢と仕組みづくりが足りない。
情報戦は少数の天才などでなんとかなるものではなく、情報収集インフラも含めて整備が必要。
アメリカではアメリカ又は協力国を通過する通信基幹回線からの情報取得をしている。
マイクロソフト、ヤフー、グーグルなどの民間企業と協力してそれら企業が保有するメールその他の情報を合法的に分析している。(プリズム計画)
国家諜報機関のトップ(CIA兼DCIトップ)はCIA、国防総省、各軍、司法省、財務省等のインテリジェンス機関を統括している。

一般的にDIMEが認識され、安保三文書でサイバーセキュリティ強化の記載がある一方で、
いずれの強化にも必要なシギントの強化や国家シギント機関設立の気配は感じられない日本。

余談かつ、単なる感想として、
警察官僚OBである茂田氏だが、対国内インテリジェンスだけでなく、軍、対外的インテリジェンスに知見があり、
日本での国家シギント機関設立の提言では、機関トップには軍(自衛隊)出身の専門家を立てるべきと言っており、
警察の担当するインテリジェンスの範囲を超えて国益を考えたインテリジェンスを提言できている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2024年7月28日
読了日 : 2024年7月28日
本棚登録日 : 2024年7月28日

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