中学受験 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2013年12月21日発売)
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中高一貫校の受験について、実例をもとに、プラス面、マイナス面を比較。子供がいる場合に中学受験するかどうかの判断に役立つほか、中学受験を通して初等中等教育の現状や課題についての理解も深まる優れたルポタージュである。
中学受験については、中高一貫校を「夢の楽園」として描くなど、美化された言説が多く流布している現状があるので、本書では、そのマイナス面を意識的に取り上げている。例えば、中学受験自体にかかる親子の経済的・心理的負担はもちろんのこと、中高一貫校に行ったとしても、内部で競争があり、「落ちこぼれ」が生まれる、家庭教師代や塾代もかかる、いじめもあるといったことである。
中学受験が盛んになったきっかけとして、都立高校の学校群制度の導入が指摘されていた。学校間格差をなくすという触れ込みで始まった政策が、都立高校の凋落をもたらし、それに不安を持った裕福な保護者は私立中高一貫校への受験に走り、余計に教育格差を拡大することになった。ゆとり教育も公教育への不信を高め、私立中高一貫校を利することとなった(ゆとり教育導入にあたって意思決定を行った中教審の委員に私立中高一貫校関係者がいて、自分たちを利するように誘導していたというエピソードも驚きだった)。公教育改革の影響の大きさを思い知るととともに、公教育改革にあたってはどういう結果になるのかをよくよく考え、しっかりと制度設計することが重要だと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年11月24日
読了日 : -
本棚登録日 : 2014年2月22日

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