思想としての近代経済学 (岩波新書 新赤版 321)

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  • 岩波書店 (1994年2月21日発売)
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著者の森嶋通夫(1923-2004年)は、ノーベル経済学賞の候補にも何度か名前が挙がっていて、「ノーベル経済学賞に最も近かった日本人」と言われています。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)名誉教授・元LSE Sir John Hicks Professor、大阪大学名誉教授で、LSEでは、1978年に Suntory Toyota International Centres for Economics and Related Disciplines (STICERD) という研究所の設立に貢献し、初代所長に就任しました。数理経済学者として、レオン・ワルラス、カール・マルクス、デヴィッド・リカードなどの理論の動学的定式化に業績を残しました。
本書では、何故、現実の経済を分析するのに経済学だけでは足りないのかについて、リカード、ワルラス、シュンペーター、ヒックス、高田保馬、ヴィクセル、マルクス、ウェーバー、パレート、フォン・ミーゼス、ケインズといった経済学者の業績と思想を振り返り、経済学において現実を反映した理論を構築するためには、社会学の視点を導入する必要があると結論付けています。
著者によれば、近代の資本主義は、狭義の資本主義部門と福祉・教育部門の複合体であり、二つの部門は必ず対をなして存在し、バランスを保って発展しなければならず、一方を欠く場合には、他方は長期にわたって存続することは難しくなります。もし福祉部門が過大になれば、資本主義部門はそれを支えることができず、その結果、福祉部門を縮小し過ぎると、資本主義部門に対する批判が高まり、資本主義を維持するためにも、福祉の拡大を認めざるを得なくなるということです。即ち、近代資本主義は両者のバランスの上に初めて存命できるのであって、純粋な「資本主義」経済は欠陥体制であると言っています。

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感想投稿日 : 2015年5月1日
読了日 : -
本棚登録日 : 2015年4月13日

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