実際の事件がモデルとなった本作。複数の関係者からのインタビューから、サンティアゴ・ナサールというひとりの青年に舞い込んだ不幸が徐々に浮かび上がってきます。
多くの人々が「計画」を事前に耳にし、計画を知った人々は周囲に彼に会ったら用心しろと伝えるよう頼みました。彼は現場で多くの人に目撃されていたにも関わらずそれは「決行」されます。そして人々は「結果」を知って口々に言うのです――あの時こうしていれば…と。
とある告白がむくむくと膨れ上がり、真実を創り上げる恐怖。告白につき動かされた者とただ見守った者。個々が何気なく選んだ行動が幾重にも連なった時、あるひとつの残酷な結末を生み出します。凄惨な事件のなかに人間特有の滑稽さが溢れ、読後は純粋な充実感が残ります。綿密に計算し尽くされたマルケスのストーリー展開のすっかり虜に。
期せずして噛み合わさってしまった歯車の一つ一つを確認するように、再び読み返したくなる面白さがありました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
外国文学
- 感想投稿日 : 2017年3月5日
- 読了日 : 2017年2月21日
- 本棚登録日 : 2017年1月20日
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