完訳チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1996年11月22日発売)
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感想 : 67
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コニーは裕福な貴族クリフォード・チャタレイのもとに嫁いだ矢先、夫はすぐに戦場に赴き負傷し下半身不随となってしまう。若いコニーは心も体も満たされず心苦しい日々を過ごしていた。ある日、森番のメラーズと出会い男女の一線を越えてしまうが、コニーは女として本当の悦びを知り逢瀬を重ねていく。

20世紀最高の性愛文学と言われ、発禁処分や検閲から数十年を経て再版された完全版です。
女としての経験を経て、はじめて「女として生まれた」と噛みしめているコニーの発散された想いは悦びと愛情に溢れています。メラーズもまた、心から愛した女性との行為に悦びを爆発させています。夫を持つコニーの行動は決して賞賛されるものではありませんが、絶望の淵にいたコニーとメラーズがぽっかりと空いた互いの穴を埋めるように惹かれ合い、体も心も満たされていく描写はただただ綺麗です。
性描写が注目されがちで、言ってしまえば不倫関係です。しかし激情的なものではなく、傷を抱えた二人が求め見つけた、癒しにも似た真実の愛は温かみすら感じます。そこから派生する人間模様や心情描写、背景にある社会階級問題など、純粋に文学作品として上質なものを読んだという印象でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 外国文学
感想投稿日 : 2015年8月28日
読了日 : 2015年8月10日
本棚登録日 : 2014年11月10日

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