近年はすっかりキーボードに頼ることが多くなりましたが、お礼状や結婚式での芳名帳への記入、上司へのちょっとしたメモ等々の日常の場面で、自分の手書き文字に愕然とする瞬間があります。
一見すると上手く手書きするコツを扱った本のように紹介されていますが、中身は上手くなるための著者の奮闘記が3割、著名人や編集者・流行り文字などの様々な「字」の紹介が7割といったところ。とてもライトな文体で書かれた気軽に読めるエッセイです。
フォント好きな私としては豊富な図版で様々な「文字」に触れられて楽しい世界でした。コラムニストの石原壮一郎さんの読解不可能なヘタ文字、名も知れぬ編集者の方々の女性らしい丁寧で柔らかな文字、ペン字教室の講師の先生による涼やかな達筆、各党首によるフリップや各省庁の看板文字などなど。
「字は体を表す」と言う通り文字から書き手の姿をつい想像してしまうので、その正誤の程はともかくも文字が人に与える印象は少なからずありそうだと思いました。つまり自分の字も・・・他人様に一体どんな印象をもたらしているやら。
読むと「乱筆乱文にて失礼いたします。」と「本名」と「六甲おろしの歌詞」を手書きしたくなります(私は書きました)。自分好みの文字と出会うこと、そしてその文字を目指した地道な努力が必要だなぁとしみじみ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学(エッセイ)
- 感想投稿日 : 2017年10月14日
- 読了日 : 2017年10月14日
- 本棚登録日 : 2017年6月23日
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