猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

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本棚登録 : 4183
レビュー : 531
著者 :
谷川さん  未設定  読み終わった 

小川洋子さんの小説は、長時間のフライトの消灯時間などの閉塞的な時間に手元の小さいライトで一気に読んで、目的地についたら「あー、なんか妙な夢見たな…」みたいな感覚で意識の裏側にしまいたい…という感じの作品が多いと思います。
この作品もそうで、グロテスクで暗くて静かで、透明感の強い美しい小説でした。
閉塞世界の中にだけ広がる宇宙を描かせたら小川洋子さんの右に出る人は居ないと思います。

11歳の時から成長の止まった身体に、唇からはもっさりと脛毛が生え散らかした異形の男がからくり人形の中にぎちぎちに身体を隠して、誰にも姿を見せずチェスをする……ってけっこう限界フェチ小説だと思います。しかし最終的にこれより美しい姿はないような気にさせられる…

老婆令嬢が好きでした。
駒を持つ手も震えて覚束ないような老貴婦人が、年齢にも見た目にも似合わないエネルギッシュで冒険的なチェスを指す…。
本来少し不器用なルークを伸び伸び操って迫力をまき散らし、雪山を滑降するように、ハングライダーで大空を舞うようにチェス盤からはみ出るような棋譜を作る…
最後はボケて自分がチェスプレイヤーだったことも、あんな美しい棋譜を残したことも分からなくなってしまいますが、最愛の駒だったルークを持ってこれが気に入ったわと言うシーンはほんとに美しかったと思います。

フェチの世界に飲まれたいとき読みたい作家さんです。

レビュー投稿日
2019年8月6日
読了日
2019年8月6日
本棚登録日
2019年8月6日
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