アルゴールの城にて (岩波文庫)

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本棚登録 : 133
レビュー : 12
制作 : 安藤 元雄 
文箱さん フランス - 小説   読み終わった 

三人の若く美しい男女、古城、それを取り巻く森と海。設定も筋立てもごくシンプルで、様式的といってもよい。
はしがきで作家はこの物語が『パルジファル』の書き替えとして読まれることを認めている。文中には『ローエングリン』への言及もあり、ワーグナーの神秘主義的作品世界との響き合いは作品のひとつの柱だろう。主人公たちが礼拝堂の廃墟を訪れる場面など、ワーグナーからさらに踏み込んで聖杯伝説本体の中世的色合いも帯びている。
しかし最も強烈な余韻を残すのは、その観念的で凝りに凝った耽美な文章そのものである。古城の石の床に、深い森に、波打ち際に、光と影がゆらめきながら描いていく絵を眺める。それは一瞬として留まることなく絶えず姿を変える。やがて物語も登場人物たちもどこかへ行ってしまって、文章が呼び起こす陶酔のような感覚だけが体内に満ち満ちる。
ゴシックロマン風の筋やブルターニュの風光の助けを借り、素朴な読み手は華麗な文体のめくるめくリズムとイメージに巻き取られ翻弄されていくのだった。

レビュー投稿日
2014年6月3日
読了日
2014年6月3日
本棚登録日
2014年6月3日
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