夢の花、咲く

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本棚登録 : 81
レビュー : 13
著者 :
じゅんさん  未設定  読み終わった 

朝顔同心・中根興三郎シリーズの第二弾。変化朝顔に夢中で嫁ももらえぬ呑気な興三郎。彼の根底にある人の良さがとても好きです。


江戸時代に、変わった朝顔を咲かせることが流行し、投機にまで利用された、という話は前作で驚きつつも読ませられたのですが、今回はその朝顔を縦軸に、江戸の市井の人々の日常や思いの悲喜こもごもをじっくりと感じることができました。

八丁堀の旦那、というと、江戸の治安を守る着流しに黒羽織の粋な人物を思い浮かべますが、興三郎は同心の中でも名簿係という地味な仕事。はっきり言って閑職だし、そもそも、三郎の名前から分かるように三男坊。本来は植物学者を目指して勉学していたところに、長男の急逝で家を継ぐことになった、しかも長兄は優秀な定町廻りだったのに、たまたまなのか、彼の力量&性格がそれには向かないということが前もって知られていたのか、名簿係を仰せつかったという・・・。

で、2日続けて出仕した後は、1日休みという職をむしろ喜び、せっせと朝顔の手入れをしている彼なのですが、先代から仕えている小者の藤吉が嘆くこと、嘆くこと。彼の親身なキャラクターがとてもいいんですよ。(後半、興三郎が探索に関わった時には彼もすっごく張り切っちゃってね。嬉しそうに聞きこみに回る姿が読んでいて嬉しかったです。)

興三郎は、他の同心や市井の人々と穏やかに交わり、間延びした容姿のせいもあってか少々軽んじられたりもしてるのだけど、人の本質やその場で何が一番大事なことなのかをすっと見分けることができる彼のことは、みんなが好きなんだよね。

脇キャラで、絵描きの周三郎というかなりの変わり者が出てくるんだけど、彼もとてもいいです。人の顔でも朝顔でも風景でも、墨の濃淡だけで見事に写し取ってしまう様子には、その絵が目の前に見えてくるよう。
彼の絵と行動力のおかげで、滞っていた探索がひょいと進むのも楽しかったし。

また、興三郎の仕事上の知識や意外な特技が役立って行くのが嬉しかったなぁ。


後半、江戸に大きな地震が起き、(これは史実どおりだと思います。黒船に江戸が騒然としていたころだから。)それがちょうど去年の地震に打ちのめされた私たち日本人右往左往をも思わせ、そこから立ち上がろうとする人々や支える人々の話には明るい気持ちにもなれました。

ただ・・・・・
とても面白い話なのに、事件が解決するくだりになるとちょいと安易な展開で不満あり。でも、興三郎が好きだから許します・・・。

このシリーズはまだ続くんでしょうね。
興三郎の夢である「黄色い朝顔」は咲くのか、咲かないまま楽しみとしてとっておくのか。
藤吉が望むようにお嫁さんはもらえるのか。

まだまだ楽しみに読ませてもらおうと思っています。(*^_^*)

レビュー投稿日
2012年1月15日
読了日
2012年1月15日
本棚登録日
2012年1月15日
2
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