大人の水ぼうそう―yoshimotobanana.com 2009 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2010年3月29日発売)
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感想 : 22
3

死期を悟り、さよならディナーをしてお別れを告げてから死ぬ
なんて、とても理想的だと思った。
新しい着物に着替えて自分を香油で拭って
みんなにお礼を言ってから、とか
正座したまま亡くなるなんて話も聞いたことがあるが
出来るならこんな死に方を自分もしたいと思う。

病院についての記述はいつもとても同意。
ホスピタリティの語源を知らない病院が多すぎる。
医療問題が、アメリカ型の金次第の体だという記述も興味深い。
確かにそういう面の問題かもしれないと納得した。

シートベルトと路駐は問題だろうと思いつつ。

ファンの人とたとえ出会っても現実的には初対面だけれど
だれかのつらかったりしあわせだった夜に寄り添える
という言い方がとても素敵だ。

神は生きて普通に猫たちとたわむれて、マンガを描いている。
この感覚。ばななさんにファンが思っているのと同じことを
ばななさんもまた他の先生に思っている。
やっぱり、尊敬できる人、同じ時に生きている人で
こんなにすごい人がいるというのが、原動力になると思う。

注意するのでもなく「あ、しゃしん撮ってる」と嫌味を言う
日本の陰湿な感じ。わかる気がする。
良かれと思って教えてあげるのではなく
「そんなことしちゃ駄目なんだよ、私は知ってるけど」
という、小学生のチクリのようなレベルの注意は、どこにも出口がない。

ドアをあけたとき待っていたよと言ってるみたいなおうち
とまで言える家には残念ながら私は今まで出会えたことがないが
なんとなく感じるものはやはりある。
間取りも家賃も良いと思うけど、なんとなく、「ここじゃないな」という。
それに、病院と同じくらい不動産屋さんも信用出来るところが少なくて
本当にこの町や家を愛していて物件を紹介してくれる人が
ちゃんとまだいるというのはとても素敵なこと。
笹の葉を刈り込んでくれたりなんて、管理人や業者でもないのに
中々いまどきいないという気がする。
それに引き換え、ヨドバシの冷蔵庫の話は本当に愛が無い。
責任問題に転嫁して商品や仕事に愛が無くて
融通もきかなくて、時間を無駄にして神経もすり減ってしまう。
お子さんが トイレに行きたい、と言っただけで
何も言っていないのいトイレを貸してくれたお肉屋さんは
やっぱり愛があると思う。

絵を書く人が仕事だからじゃなく人生の一部を分けてくれる
というのも、やっぱり愛なんじゃないのかな。
作家さんや作品や、仕事に対しての。

心の中の大事な部屋が狭くならないように、戻れる場所というのは
やっぱり必要だと思う。

映像で読むタイプの人、という表現にも納得。
自分は確かにそんな感じでいつも本を読んでいると思う。

大学生について
一生一度の夢、でも大学生のときはそんなふうに思えず、
寂しかったり虚しかったり悔しかったりみじめだったりする
というのがとても同意。只中にいるときにはわからなくて
ただ必死だったりするけど、実はとても幸せで夢みたいな日々だったんだなと
後から気付くことはたくさんあると思う。
それで後悔しないように、毎日丁寧に生きていくしかないのだな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ・旅行記
感想投稿日 : 2011年5月14日
読了日 : 2011年5月13日
本棚登録日 : 2011年5月9日

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