猫のゆりかご (ハヤカワ文庫 SF 353)

  • 早川書房 (2012年2月15日発売)
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本棚登録 : 2033
感想 : 171
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さー、久々にハードSFでも読んでみるか!と手に取ってみたら全然違った、という本。

むかしSFはよく読んだけど、この著者は初めて読む。

なぜハードSFだと思ったかというと、別件で調べものをしていて「アイス・ナイン」という物理学方面の単語に出合ったからだ。

9番目の氷? なんか素敵じゃん。と。

ところが、開いてみたらこれはそういった科学的興味の本ではなく、著者自身が冒頭で示唆している通り虚妄の大伽藍で、平たく言えば偉大なるホラ話だったのである。

さて、作中でいうアイス・ナインは、常温・常圧で水を凍りつかせる「種」なのである。

たとえばコップの水にそれを落としたら、その水はたちまち凍ってしまう。「種」に口をつけ、体の水分に触れさせたら、体がすぐに凍ってしまう。その遺体がもし海に落ちたら、海すらもあっという間に固体と化してしまうのだ。

そうした世界の救いなき終末までを、この小説は描き上げる。

猫のゆりかごとは、この本によるとあやとりのX字が重なったもので、指をほどけば解けてなくなってしまう象徴。すなわち絢なる世界もひと皮むけばすべて無意味で虚しいのだ、ということが主題らしい。

たいへん面白かった。

結末は、わたくし的には非常に納得の行かないものだったけどね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2019年6月19日
読了日 : 2012年12月14日
本棚登録日 : 2012年12月14日

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