さー、久々にハードSFでも読んでみるか!と手に取ってみたら全然違った、という本。
むかしSFはよく読んだけど、この著者は初めて読む。
なぜハードSFだと思ったかというと、別件で調べものをしていて「アイス・ナイン」という物理学方面の単語に出合ったからだ。
9番目の氷? なんか素敵じゃん。と。
ところが、開いてみたらこれはそういった科学的興味の本ではなく、著者自身が冒頭で示唆している通り虚妄の大伽藍で、平たく言えば偉大なるホラ話だったのである。
さて、作中でいうアイス・ナインは、常温・常圧で水を凍りつかせる「種」なのである。
たとえばコップの水にそれを落としたら、その水はたちまち凍ってしまう。「種」に口をつけ、体の水分に触れさせたら、体がすぐに凍ってしまう。その遺体がもし海に落ちたら、海すらもあっという間に固体と化してしまうのだ。
そうした世界の救いなき終末までを、この小説は描き上げる。
猫のゆりかごとは、この本によるとあやとりのX字が重なったもので、指をほどけば解けてなくなってしまう象徴。すなわち絢なる世界もひと皮むけばすべて無意味で虚しいのだ、ということが主題らしい。
たいへん面白かった。
結末は、わたくし的には非常に納得の行かないものだったけどね。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
SF
- 感想投稿日 : 2019年6月19日
- 読了日 : 2012年12月14日
- 本棚登録日 : 2012年12月14日
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