映画「おくりびと」の「原作」である。
小説、つまりお話の形になっているのかなと思ったら、著者が書き連ねていた日記をもとにした、随想のような本であった。後半は宗教書っぽくなり、また話は宇宙物理学にまで及んだりする(死を突き詰めて考えると、どうもそういうところまで行ってしまうらしい)。
映画では納棺師と言っていたが、なんと「納棺夫」だ。実際、映画のようなきれいな世界ではないし、忌まれる存在であったことは想像に難くない。本にも、(家族などの)素人がいろいろいじっていたら血とか何とかが出て来ただとか、蛆とか轢死体とか、映画ではあり得ない生々しい描写もある(映画でも少しは触れていたけど)。
さてしかし、遺体を扱うだけに、技術や経験の蓄積みたいな話で済まないところが、この仕事の深さだろう。
多くの、さまざまな死(と遺族)に向き合っていると、やがて死と生とがひとつながりであることが見えてくる。
苦しんだ人も、怒りや憎しみを抱いた人も、死に顔はほとんど安らかなものであるという。いまわの際には「ひかり」が見えるともいう(立花隆氏の著書「臨死体験」にもそういうくだりがあったっけ)。著者自身、あるとき、蛆が神々しく光って見えたことがあったそうだ。
その「ひかり」の前では生への妄執や現世的な欲望などがすっかり浄化され、言ってみれば「悟り」の境地が自然に訪れるらしい。
なるほど、宗教とは何か、悟りとは何かを正面から論じている本だけに、映画(お話)に納得がいかなかったのも無理はない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
宗教
- 感想投稿日 : 2019年6月6日
- 読了日 : 2018年6月17日
- 本棚登録日 : 2018年6月17日
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