北の詩と人―アイヌ人女性・知里幸恵の生涯

  • 岩手日報社 (2016年6月1日発売)
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知里幸恵さん、と言えばあの「銀の滴降る降る・・・」に始まる「アイヌ神謡集」の著者として、またアイヌ語辞書などを著した知里真志保氏の姉としても知っている。

ただ、思えばそれ以上のことはあまり知らなかった。
その知里幸恵さんの生涯を描いた小説である。

この本を知った新聞の書評には、事実とは異なる描写がある・・・とあって若干の割引は必要なようだが、それでも当時のアイヌ民族を取り巻く状況や、幸恵さんの祖母や伯母から受け継いだ特異な才能といったものが垣間見られて、非常に興味深く読んだ。

中んづく、当時においてさえアイヌ語と日本語の両方を自由に操る人は希少だったこと、文字を持たなかった(裏を返せば文字を必ずしも要しなかった、のかも知れない)記憶力・構造力に優れたアイヌ民族の中でも飛び抜けた能力であったこと、キリスト教に根ざした他を思いやる気持ちや高潔な生活態度などには心打たれるものがあった。一部採録されている書簡や日記(なんと丁寧で豊かな文章)も、貴重な記録だろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 伝記
感想投稿日 : 2019年6月27日
読了日 : 2016年9月21日
本棚登録日 : 2016年9月21日

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