クララとお日さま

  • 早川書房 (2021年3月2日発売)
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本棚登録 : 520
感想 : 93
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AIアンドロイドのクララと病弱な女の子ジョジーの物語。クララの、すなわちAIの一人称で語られる。

冒頭、AI(同型のアンドロイドの中では飛び抜けて優秀)自身から見た認識・学習過程の描写や、2人の心温まる出合いなどを楽しみながら、そこはイギリスの作家だし、ノーベル賞作家だし(受賞後最初の出版だそうだ)、一筋縄では行かないんだろうなという警戒感が頭をもたげてくる。

クララの計画がとんでもない結果をもたらしたりしないか。ジョジーの母や隣家の母の妄信のゆくえは、ジョジーとリックの関係は、なによりもクララの運命は・・・果たしてこの物語はハッピーエンドを迎えるのだろうか?

作家特有と思しき、事情をはっきりとは描写せずに思わせぶりに重ねていく構成にも、警戒感の理由はあるようだ。

そういう不案内な心持ちを抱かせたまま突き進んだラストシーンは、クララにとってはもちろんハッピーエンドだったろう。登場人物それぞれにとっても。でも、個々を離れて世界観全体を見渡した時、やっぱりそこには格差、倫理観の歪み、環境や物の浪費、人間社会の不如意といった、難しいものが残るのである。

いやそれはともかく、最後めっちゃ泣けた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2022年10月10日
読了日 : 2022年10月9日
本棚登録日 : 2022年10月9日

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