AIアンドロイドのクララと病弱な女の子ジョジーの物語。クララの、すなわちAIの一人称で語られる。
冒頭、AI(同型のアンドロイドの中では飛び抜けて優秀)自身から見た認識・学習過程の描写や、2人の心温まる出合いなどを楽しみながら、そこはイギリスの作家だし、ノーベル賞作家だし(受賞後最初の出版だそうだ)、一筋縄では行かないんだろうなという警戒感が頭をもたげてくる。
クララの計画がとんでもない結果をもたらしたりしないか。ジョジーの母や隣家の母の妄信のゆくえは、ジョジーとリックの関係は、なによりもクララの運命は・・・果たしてこの物語はハッピーエンドを迎えるのだろうか?
作家特有と思しき、事情をはっきりとは描写せずに思わせぶりに重ねていく構成にも、警戒感の理由はあるようだ。
そういう不案内な心持ちを抱かせたまま突き進んだラストシーンは、クララにとってはもちろんハッピーエンドだったろう。登場人物それぞれにとっても。でも、個々を離れて世界観全体を見渡した時、やっぱりそこには格差、倫理観の歪み、環境や物の浪費、人間社会の不如意といった、難しいものが残るのである。
いやそれはともかく、最後めっちゃ泣けた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ファンタジー
- 感想投稿日 : 2022年10月10日
- 読了日 : 2022年10月9日
- 本棚登録日 : 2022年10月9日
みんなの感想をみる