AIアンドロイドのクララと病弱な女の子ジョジーの物語。クララの、すなわちAIの一人称で語られる。
冒頭、AI(同型のアンドロイドの中では飛び抜けて優秀)自身から見た認識・学習過程の描写や、2人の心温まる出合いなどを楽しみながら、そこはイギリスの作家だし、ノーベル賞作家だし(受賞後最初の出版だそうだ)、一筋縄では行かないんだろうなという警戒感が頭をもたげてくる。
クララの計画がとんでもない結果をもたらしたりしないか。ジョジーの母や隣家の母の妄信のゆくえは、ジョジーとリックの関係は、なによりもクララの運命は・・・果たしてこの物語はハッピーエンドを迎えるのだろうか?
作家特有と思しき、事情をはっきりとは描写せずに思わせぶりに重ねていく構成にも、警戒感の理由はあるようだ。
そういう不案内な心持ちを抱かせたまま突き進んだラストシーンは、クララにとってはもちろんハッピーエンドだったろう。登場人物それぞれにとっても。でも、個々を離れて世界観全体を見渡した時、やっぱりそこには格差、倫理観の歪み、環境や物の浪費、人間社会の不如意といった、難しいものが残るのである。
いやそれはともかく、最後めっちゃ泣けた。
2022年10月9日
(2022/8/10読了)
緊急読書。
ロシアがウクライナに侵攻して半年。戦闘は終わりが見えない。
ロシアが一方的に侵略し、欧米諸国の支援を受けてウクライナがけなげに応戦しているように見える戦争だが、そもそもプーチンはなにを目指しているのか?を知りたいと思った。病気を背景にした権力欲か、雑な覇権主義か、肥沃な土地や作物を狙っているのか、それともなにか合理的な深謀遠慮があるというのか?
そこでこの本、かねてロシア情勢に明るい著者による緊急出版である。全編が書き下ろしではなく、これまでに雑誌等に発表されて来た論文をベースに、プーチンとは何者か? プーチンの人となりは?という辺りから始まって、北方領土やクリミアの情勢も交えて、ロシアとウクライナの真の関係と戦争の枠組みに迫る。
読んでみると、意外にというか、やっぱりというか、佐藤氏としては手放しでロシア/プーチン非難の立場ではなかった。
プーチン氏は情報将校出身で、陰険で冷酷。無差別でいい加減な攻撃で、市民の日常や子供たちの未来を無造作にたたき壊すロシア軍の乱暴なふるまいは論外。
ただ、「ハエの這い出る隙もなく包囲する」などといった汚い表現も、どうも計算して言っている節がある。
ウクライナ自体も決して一枚岩ではなく、ウクライナ東部にはロシアシンパだけではなく「自分はロシア人と認識している」国民もいる。ソ連時代からの歴史もあり、国民感情は実は複雑だ。
またウクライナ政府側にもナチスドイツの流れを汲む民族主義者とつながりがあったり、「ウクライナは一つ」を演出したい者がいたりして、むしろロシアをいたずらに刺激している側面もあるようだ。プーチンがいう「ロシア系住民を護る」にも、単なる筋書きではない一抹の真理が存在しているということらしい。
やはり知らないというのは恐ろしいことだ。
人道主義の観点はもちろん重要だが、日本ではその点にだけ着目して情緒的に報道されたり、その報道だけを信じたりしていないだろうか。
折しも、ロシアの極東戦略や中国の台湾などをめぐって、暗雲が迫っている。そういう不穏な情勢が近隣で実際に動いている中で、日本が進むべきはどっちなのか、できるだけ公平な情報に触れ、いよいよ考え、準備して行かなければならない段階に入っているように感じる。
2022年8月10日
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ヤマザキマリ対談集 ディアロゴス Dialogos
- ヤマザキ・マリ
- 集英社 / 2021年3月26日発売
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ヤマザキマリさんと、養老孟司さん・萩尾望都さん・兼高かおるさんら11人との対談集。
対談は、兼高さんを除き、2019~2020年にかけて行われた。
内容はいきおい比較文化論的になるんだけど、ライトモチーフとしては「運動」、すなわちオリンピックのあり方だとか、なぜ日本人は金メダル金メダル言うか、という辺りに主な関心があるようだ。
ほぼコロナ禍は始まった頃合いで、「来年はオリンピック開催はムリでしょうね」という話ではほぼ一致していて、識者ならずともそれが素直な見方というものだろう。
政府はいつまで経ってものらりくらりだし、ワクチンも頓挫し、感染は当然収まらない中でついに五輪は開催される。それでなくてもいろいろ「呪われた五輪」、空中分解しないことを祈る。
平田オリザさん、内田樹さんとの話が存外に面白かった。
2021年7月7日
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街道をゆく 41 (朝日文芸文庫 し 1-45)
- 司馬遼太郎
- 朝日新聞出版 / 1997年8月1日発売
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(2020/10/28読了)
「街道をゆく」シリーズ、その41。驚くほど面白かった。
まほろばとは、「素晴らしい場所」「住みやすい場所」という意味だそうだ。今回の話題の中心である東奥圏は、「やませ」に代表されるように、農耕に軸足を置く限りなかなか生活環境が厳しい地域柄である。その中でなぜまほろばと呼ぶか?・・・という説明が最初にある。
それは、農耕社会になったから苦しいんであって、狩猟採集の時代にはまたとない環境であった。北方文化圏との関連では立地も非常にいい。農耕化や近代化の功罪を思う。という内容なのである。初手から深謀がある。
さて、今回訪れるのは青森県、津軽や南部地域。
津軽と南部の軋轢、蠣崎・松前藩の来歴、オホーツク文化の痕跡、太宰治や棟方志功、「会津」の痕跡、りんご作りの苦悩(落果の涙)・・・などが綴られる。
一時期弘前住みだったことがあるが、ここにあるような深いところは知らなかったし、感じたこともなかった。この本を読んで改めて思えば、もったいないことである。
2020年10月28日
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パスタぎらい (新潮新書)
- ヤマザキマリ
- 新潮社 / 2019年4月17日発売
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(2020/10/11読了)
ヤマザキマリさんの、食エッセイ集。
これまたサスガである。食に関しても、その体験の濃さがある。世界各地の食文化に対する考察も去りながら、おにぎり愛、たまご愛、餃子愛は筋金入りである。
話は当然、比較文化論じみて来るのだが、日本人が持つ受容性、偏食とグルメなどへ転がって行くのが面白い。
なお、「パスタぎらい」とタイトルに謳っているが、本文中にある通り、コロナ禍でイタリアのパスタが食べられない現状、いやが上にもパスタ渇望が湧き上がる。その気持ちは痛いほどワカル。
2020年10月11日
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街道をゆく 38 (朝日文芸文庫 し 1-41)
- 司馬遼太郎
- 朝日新聞出版 / 1997年1月1日発売
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(2020/9/11読了)
過日、オフクロがシリーズをセットで入手したてんで、そのうちの一冊を(オレが興味ある地域だろうと言って)貸して寄越した。
今さら?司馬遼太郎読むってかーい? と正直思ったけど、読んでみたらなまら面白かった。
街道をゆくシリーズ、その38である。
作家がオホーツクに何をしに行ったかというと、オホーツク文化の考古学をしに行ったのである。(現地の考古学者や民俗学者に会いに行った、現地を眺めるだけではなく)
アイヌ、ニブヒ(ギリヤーク)といった先住民族の活動に思いを致し、粛慎とかみしはせといった中国や日本の古典に現れる「夷狄」像に迫るのである。
見る人が見れば、「道」もこのように深みをたたえている。サスガすぎる。
2020年9月10日
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北斎になりすました女 葛飾応為伝
- 檀乃歩也
- 講談社 / 2020年3月13日発売
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(2020/8/21)読了
北斎の娘・応為の伝記。
応為はマンガ(杉浦日向子さんの「百日紅」)を通して知っているだけだったけど、その実像がわかる本である。と同時に、杉浦さんの描写の正確さに改めて感心する。
また、晩年の北斎が多作だった謎とかもすんなりと納得できる。稀代の大天才だもの、80歳とかなっても旺盛な創作意欲を持っていたんだべな・・・とか素朴に思っていたんだけど、そうばかりでもないらしい。
著者は構成作家だそうで、タイトルの「なりすました」というのは結構、煽りかな。(構成作家だから悪いという話ではなく、そこは演出も入っているんだろうなと)
2020年8月21日
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大地よ! 〔アイヌの母神、宇梶静江自伝〕
- 宇梶静江
- 藤原書店 / 2020年2月26日発売
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(2020/8/12読了)
近ごろ北海道新聞紙上などでもよく見かける、アイヌ民族である古布絵作家の自伝的エッセイ。
筆者も、出自や差別に悩まされてきた一人のようだけど、いわゆる「土人保護法」や漁業権の問題、なかんずく「ウポポイ」問題(箱モノありきで、アイヌの立場、発信すべきものをしっかり議論していない、とする)などを通して、日本の過去・現在の行政(役人)の問題点を論じる。
一方で、「絵、踊り、歌に、自然と血が騒ぐ」「アイヌには所有の概念がない」「自然への畏敬」など、民族が持っている特質への温かいまなざし、尊崇の念も語られる。
素朴な文体が却って胸に迫る好著であった。
2020年8月12日
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ゴミ分別の異常な世界: リサイクル社会の幻想 (幻冬舎新書 す 3-1)
- 杉本裕明
- 幻冬舎 / 2009年7月1日発売
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(2020/7/25読了)
日本のゴミ政策の虚実を教えてくれる本。
結論的には、「ゴミの分別、リサイクルは不可能」ということに尽きそうだ。
タイトルの「異常」とは、要するに役所の仕事っぷりを指す。
野放図な予算組み、見通しの甘さ、責任の不在(責任のなすり合い)、官製談合、不要なゆるキャラ、「検定」などの愚策・無駄遣い、住民との、あるいは自治体間の軋轢、ことなかれ主義、などなど・・・まあこれでもかというくらいゲンナリする話が続く。
もっとも、そもそも役所に任せるのが愚であるというか、住民自身の意識、モラルが低すぎるのが問題なような気もする。
*
ところで、(むかし住んでいてよく知っている)府中市のダストボックスは、とっくに廃止されたらしい。(ちなみに出版は2009年)
2020年7月25日
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有限と微小のパン (講談社文庫)
- 森博嗣
- 講談社 / 2001年11月15日発売
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(2020/7/12読了)
脳化小説。
同著者のいわゆるM&Sシリーズだけど、デビュー作でもある第一話「すべてがFになる」を読み、途中全部すっ飛ばして最終話(?)を読んだわけだ。
「すべてが・・・」の副題が「The Perfect Insider」というのに対し、本作は「The Perfect Outsider」という。なるほどうまくできている。
お話はVR(バーチャルリアリティー)を軸にした殺人事件で、VRを巡る哲学は読み応えあり。Perfect Outsiderの含みは、つまりVRによって人間はその場にいなくてもよくなるということだけど、結果「それはいいことである」とする立場には頷けない。(それが間違いなく来たるべき未来であるとしても)
「天才」が次々ごろごろ出て来るのを始め、できすぎたお膳立て、気持ち悪いキャラクターとかがあまり好きになれない。ミステリーだから一応最後まで読んだけど。
2020年7月12日
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イザベラ・バード 旅に生きた英国婦人 (講談社学術文庫)
- パット・バー
- 講談社 / 2013年10月11日発売
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(2020/6/24読了)
19世紀後半に地球を2周か3周した女性旅行家・紀行作家の伝記。
この時代に女性が一人で世界旅行ができたというのがそもそもの驚きだけど、そういう人はほかにも結構いたみたいだ(当然、各地の領事とコネがあるとか特定の身分があってこそ)。
梅雨や蚊などに悩まされていい印象はないみたいだけど、日本にも来訪している。
印象的だったくだり:
「秋田の日雇い人夫は粗野ではあるが、東京の人夫と同様に沈着で礼儀正しく、白沢の少女は日光の少女と同じく落ちついて、子供たちは皆同じ玩具で同じ遊びをし、同一年齢なら年相応の段階を経て成長していくのです。
これはことごとく社会秩序の厳しい足枷に縛りつけられているということであり・・・それ以上に良いところがあると私は思っているので、西洋の慣習やマナーを真似ることによって日本の公序良俗が破られていくのを見ると心から悲しくなってきます。」
北海道に渡ってアイヌとも知遇を得ており、
「彼らは体型がほとんど似ていない日本人から、原始的であまねく広まっている侮りを受けているが、見知らぬ人に親切で愛想がよく・・・一切質問されることなく、まるで“家族の一員のように”歓待された。」
と、バイアスのない率直な感想を残している。
内容は面白かったけど、構成のためか翻訳のためか読みにくくて時間がかかった。
2020年6月24日
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静かな雨 (文春文庫 み 43-3)
- 宮下奈都
- 文藝春秋 / 2019年6月6日発売
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(2020/6/10読了)
宮下奈都さんシリーズ。
事故で高次脳機能障害になり、記憶が1日しか保たない女性と一緒に暮らす。
淡い色の水彩画みたいな筆致だけど、中味はけっこうせつなくもムツカシイ話である。
2020年6月10日
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足跡図鑑: フィ-ルドガイド
- 子安和弘
- 日経サイエンス / 1993年10月15日発売
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(2020/6/9読了)
全国の野生動物のトラッキング(足跡などの痕跡)の見方・ノウハウ図鑑。
図鑑部分(図示)と解説部分(文章)がページをまたいで離れているので読みにくかった。
2020年6月9日
(2020/6/7読了)
「レコ芸」に連載されたエッセイをまとめたもの。著者は中欧・東欧の音楽史、民族音楽学が専門の音楽学者ということで、まさにその専門分野の周辺を闊達に語り起こす本である。
ここで扱われる東欧音楽に、クラシック音楽の原風景を感じるし、紹介されているいろいろな本や映画、演奏者たち(クルレンツィス、コパンチンスカヤなんかはCD借りて来ちゃった)に触れてみたくなる浸透力を持っている。専門であるという以前に、著者が三度の飯より好きな分野だからだべなあ。
しかし話が全体にハイブロウすぎて、音楽を聴くにはここまで突っ込まないといけないのか、と遠い目になっちゃったりもした。
2020年6月7日
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グレングールド、音楽、精神
- ジェフリー・ペイザント
- 音楽之友社 / 2007年9月15日発売
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(2020/6/4読了)
本書はピアニストの伝記ではなく、グレン・グールドという音楽思想家の仕事を批判的に論じたものである。
なにより、グールドが寡黙な変人ではなくて、意外に饒舌なコミュニケーターであることがわかる。
いわゆるコンサート活動をやめてしまった理由も詳らかだが、「聴衆が演奏会に来る理由は音楽とは無関係だ」という言葉が刺さった。
2020年6月4日
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風立ちぬ [DVD]
- 宮崎駿
- ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 / -
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(2020/6/2)
宮崎駿監督、2013年、日本。
宮崎駿氏、最後の(?)長編アニメ。
結局は兵器礼賛(偏愛)な話かと思って敬遠していたが、様子は違った。
のちに零戦を設計した堀越二郎の生涯と、堀辰雄の小説「風立ちぬ」を組み合わせた、ある意味シンプルなラブ・ストーリー。劇的な転回のようなものはなくて、年齢を重ねた巨匠監督の枯れた筆致が感じられる。
事前に思ったより面白かった。
2020年6月2日
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KUBO/クボ 二本の弦の秘密 [DVD]
- トラヴィス・ナイト
- ギャガ / -
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(2020/5/11)
トラヴィス・ナイト監督、2016年、アメリカ。
中世日本を舞台にしたストップモーション・アニメ。
魔法を操る三味線弾きの少年と邪悪な帝王との対決。三味線の「三本目の弦とはなんなのか」がキモとなる。(その秘密はなかなかいい)
KUBOというのは公方のことかいな? 日本が舞台といっても、アメリカ映画だとどうしても中国が入っちゃうんだな。あとストーリーのテンポが難。
2020年5月11日
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薪を焚く
- ラーシュ・ミッティング
- 晶文社 / 2019年11月12日発売
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(2020/5/6読了)
ノルウェーのジャーナリスト・作家による、薪・薪ストーブ愛の結晶。
もっとも、趣味の世界というわけではなくて、日本よりよほど生活に密着した、むしろ文化論のジャンルなんだろう。
内容は薪の道具や薪割り台・薪棚のノウハウ、乾燥や炎のメカニズムといった辺りが細大漏らさず網羅されていて、まさに薪・薪ストーブのバイブルと言っていいのではないか。
中でも、薪積みのいろいろ(感心を通り超して呆れるような積み方も多い)や、それぞれに名前がついているのが面白い(オーソドックスな、両端を井桁状にするやり方にもちゃんと名前があった:「ファヴン積み」)。
以前観たアニメ映画「アナと雪の女王」で、街の住人が薪の樹皮を上にする、下にするで言い争っているシーンがあったけど、それがどういうことかが分かるくだりもある。
薪の風景ばかりではなく、薪が人生そのものであるような爺さん(羨)や、トラクターで運搬する子供などなど、著者撮影の写真の数々も秀逸。
2020年5月6日
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アナと雪の女王2 [DVD]
- クリス・バック
- ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 / -
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(2020/4/22)
クリス・バック/ジェニファー・リー監督、2019年、アメリカ。
これはやばい。大傑作。
1作目はちょっと緩めのベタベタした話だったけど、今回は人物描写もしっかり練られた印象。エルサの融通が利かない、直情径行だけどリーダーシップがあるところ。アナの行動力、無鉄砲さと理性のバランス、などなど。
エルサはなぜ魔法を持って生まれたのか。両親の死の真相は。「精霊」の性格づけと行動、ダム破壊への筋道など、お話の脈絡、ロジックが素晴らしい。女王と王位継承権者が揃って、なぜわずかなお付きだけで危険な旅に出るのかとか、突っ込み始めたら切りがないけど(笑)(1作目でアナ王女が薄着で単身冬山に分け入ったのに比べたらましだわな)。
ダムのモデルがノルウェーに実在するAltaダムとされているようだけど、物質文明や自然軽視への批判的精神にも共感できる。
そして、前作以上に歌の力を感じる。イディナとクリステンは言わずもがな、子守歌(エヴァン・レイチェル・ウッド)の深みもいいし、エンドロールで出て来るパニック!イン・ザ・ディスコの圧倒的な歌唱力、ケイシー・マスグレイブズの現代カントリーの味もいい。
なにより「謎の呼び声」を演じたノルウェーの歌姫AURORAちゃん(オペラ系の大御所だとばかり思ったけど若手だった)の透明な歌声にはまじ惚れ。CD買ってYouTubeを追っかけまくっちゃった。
2020年4月22日
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森林観察ガイド―驚きと発見の関東近郊10コース 森のふしぎを知る
- 築地書館
- 築地書館 / 2007年4月1日発売
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(2020/4/21読了)
副題をよく見ると「関東近郊10コース」とあって、山歩きのガイド本なのだった。
植生であるとか地形であるとかアブラチャンなんていう木があるんだとか、ちょっとそそられる部分はあるけれども、北海道住みのオレにはあまりピンと来なかった。
もう一つの副題「森のふしぎを知る」の方が主眼だったらよかったのになあ。
2020年4月21日
(2020/4/13読了)
北海道の開拓時代や昭和20~30年代を舞台に、蚕、ミンク、ハッカ、馬など当時の産業に翻弄される人間たちの袋小路のような生を描く短編小説集。
そうした営みの興亡は、現代にも繋がっている。
2020年4月13日
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スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け [DVD]
- J.J.エイブラムス
- ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 / -
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(2020/4/6)
J.J.エイブラムス監督、2019年、アメリカ。
スターウォーズシークエルの完結編。
・・・なので一応観たけど、これはアレだな、スターウォーズの衣を借りた別のSF映画だな。
「詰め込み過ぎ」感はあるけど、まあ、完結感・満足感もあります。
2020年4月6日
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古文書入門 くずし字で「東海道中膝栗毛」を楽しむ
- 中野三敏
- 角川学芸出版 / 2012年3月24日発売
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(2020/4/5読了)
くずし字を学ぶシリーズ。
今度は実地訓練というか、滑稽本のサワリをくずし字で読もうという趣向。解説は最小限・・・というか読み下しと現代語訳、五十音対照表しかついていない。そういう点では最初は苦労したが、前読の本の功徳もあって、結構慣れた。時に水中に放り出された方が早く泳げるようになったりする、のかも。
膝栗毛ってどういう意味、という積年の淡い疑問もこの機会に解決^^;
2020年4月5日
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札幌の地名がわかる本
- 関秀志
- 亜璃西社 / 2018年11月12日発売
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(2020/3/10読了)
北海道の地名解説っていうとアイヌ語由来でうんぬん・・・というケースが多いと思うけど、これはひと味違った解説書である。
開拓使とか屯田兵とかの時代から入植した和人の言語感覚を始め、時にはアイヌ語と混交し、時には故郷から持ち込んでつけられた地名をつまびらかにする。
あいの里とか桑園とか菊水とか、人々の生活史から立ち上がった札幌の地名解が特に面白かった。
2020年3月10日