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家守綺譚 (新潮文庫)
- 梨木香歩
- 新潮社 / 2006年9月28日発売
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主人公である「明治の文士」の目から見た日常を描く小説。
庭の木々や植物をフックに、濃密なイマジネーションが広がる。亡き友が掛け軸から現れて世間話をしていく、河童や人魚が現れる。キツネやタヌキに化かされる。植物の精に助けられる・・・などの怪異というかスピリチュアルなものが往来する。
さらっと書いているようでいて、また時間が疎に流れているようでいて、すごい密度の濃さを感じる。筆者のイマジネーション(精)が文章に凝結しているかのごとく。
2019年3月8日
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春になったら莓を摘みに (新潮文庫)
- 梨木香歩
- 新潮社 / 2006年2月28日発売
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2019年2月5日
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りかさん (新潮文庫)
- 梨木香歩
- 新潮社 / 2003年6月28日発売
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梨木香歩さんシリーズ。
3つの短編からなる本です。
一つ前に読んだ「からくりからくさ」の前後譚で、これも女性の世界の物語ですね。
最初の2編は、主人公ようこ(まだ「蓉子」ではない)が少女で、日本人形の「りかさん」と出会う頃のお話。
寄せ集めの雛飾りを始め、なかなか難しい人形たちの固く絡まった人生?を、ようこがりかさんの力を借りながら解きほぐして行きます。
人形と話をするというのは、ファンタジー、またはスピリチュアルに思えるけど、感じやすい女の子には普通にできることなのかもね・・・と思った。
りかさんと、ようこの祖母・麻子さんがことのほか魅力的。
若い女じゃなくてやっぱおばあちゃん、ベテランの凄みさえ感じます。こういうおばあちゃんにならないと・・・!(男だけど)
3編目は、「からくりからくさ」直後の話。
女性にとって赤ん坊とはどういう存在なのかを描く。男の読者としてはやはり濃厚っていうか、生々しさを感じますねー。
2018年12月26日
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からくりからくさ (新潮文庫)
- 梨木香歩
- 新潮社 / 2001年12月26日発売
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梨木香歩さんシリーズ。
染色や織物の世界を通して、唐草模様のように連綿と受け継がれ、伝えられてきた、女達の抑鬱と幸福を描く。
染色、機織り、パターン作家、中東にルーツを持つ外国人鍼灸師の4人の若い女性と、1体の人形の共同生活。「おばあちゃん」が住んでいた一軒家を下宿にすることになり、たまたまそこに集まった4人は、実は数奇な運命の糸で結び合わされていた・・・。
オレが読むとどことなし女女(おんなおんな)していて生々しく感じるけど、静かな中にも存在の切実さというか生の迫力というかがすごく迫ってくる。凄いお話だと思う。
能面の「般若」は知っていたけど、このお話に出て来る「生成」「真蛇」というのを先に見ておいたらもっと面白いかも。
2018年11月25日
過日実家に寄りましたら、梨木香歩さんの本が山積みになっていた。
(どこだか)に持って行こうと思ったんだけど、読む? と訊かれたので、反射的に「読む」と答えてしまった。で、6冊ほど借りて来たのである。
梨木香歩さんは、「西の魔女が死んだ」はいい話だったな。
さてこの本。
「西の魔女」はファンタジックな現実譚ではあったが、こちらはコテコテのファンタジーであった。おばあちゃんこそ出て来るけど。
空き家になっている近所の洋館。その庭は、近所の子供たちが入り込んでは遊ぶ場になっている。そこにあった鏡から、主人公の少女照美は「裏庭」の異世界に渡ってしまう。
照美はテルミーになり、謎めいた登場人物たちとともに、世界を繋ぎ止めるためのあるものを求めて、その裏庭世界を行脚することになる。
裏庭というのはかつて裏庭に消えた洋館の家族の、あるいは照美自身の心の裡なのである。で、照美はそこで傷を負い、傷を乗り越えて、家族の絆や自分の行く道を見つけるというお話である。ごく大雑把に言えば。
少女の成長譚、と言ってしまえばその通りだけど、一個の人間が周辺世界とどう関係していくのかみたいな大きなテーマがなかなか難しいし、イマジネーションの横溢について行けない。これも(トシゆえの^^;)感受性の危機なんだろうか・・・。
2018年11月15日
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西の魔女が死んだ (新潮文庫)
- 梨木香歩
- 新潮社 / 2001年8月1日発売
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ファンタジー小説かと思ったらそうではない。
西の魔女とは、主人公まい(女子中学生)の、西の方に住むおばあちゃんのこと。
まいは、現実世界のあんなことやこんなことがイヤになって、喘息や不登校を患い、おばあちゃんの家に寄宿することになる。そこで「魔女の手ほどき」を受けることになるのだが…。
自然のディテイルや、人生をうまく過ごすためのコツの描写が素敵だ。
なにより、今まで読んだどんなお話でもお目にかかったことがないびっくりの結末。
佳き作品である。
2008年1月4日