続・暴力団 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社 (2012年10月17日発売)
3.29
  • (7)
  • (39)
  • (50)
  • (14)
  • (3)
本棚登録 : 369
感想 : 49
5

清原逮捕や少し前なら餃子の王将事件など、暴力団絡みの事件は多い。けれどもそもそも暴力団という組織がなぜ存在しているのか?彼らはどうやって食っていっているのか?よく「必要悪」などと言われるが、実際のところどうなのか?自分自身が暴力団とかけ離れたところにいるために彼らに対する知識は驚くほど少ない。本書は暴力団にとどまらず、暴力団に対する警察のあり方について知る上で良書である。

本書は「暴力団の存在は否定されるべきものだ」というスタンスを基本としている(当たり前といえばそれまでだが)。そのスタンスに立った上で法や警察のあり方にも踏み込んでいる。たとえば各地で制定されている暴力団排除条例。なんとこの条例の主体は「暴力団」でも「警察」でもなくなんと「住民、市民」なのである。市民が暴力団と付き合わないというのは分からなくもないが、それじゃあ警察は一体何をするというのだ?

ただし、仮に暴力団がいなくなったとすれば、これまでのパワーバランスが崩れることも必至だ。それでも「正当な」権力で平和を維持しようとするなら、警察はこれまで以上の働きが求められる。それに本書も指摘するように、警察はその食い扶持を(退職後でさえも天下りという形で!)維持するという意味で暴力団を本気で無くそうとは思っていない。つまり警察は全然本気なんかじゃないわけだ。

結局、暴力団を減らすためにはそもそも暴力団に入る若者を阻止することしかないのではないだろうか。でも経済状況の悪化、学力の低下、学力の軽視(一部の層だが)などが進んでいると思われる現在、暴力団とまではいかずともそれに近い半グレは増えていく気がする。そしてそれがまた権力を持ち始めて、それに警察が乗っかったりするのだろうな…頭痛い。この本を読むと警察不信もますまふ強くなるよ。個人的には前作『暴力団』よりも面白かったし勉強にもなった気がする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2016年2月17日
読了日 : 2016年2月17日
本棚登録日 : 2016年2月6日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする