この本のタイトルを新聞広告で見た時、買うしかないと思った。
「自殺センター」というアイデアは、自殺という問題を「国家が管理する」という方向で考えた時にはわりとすぐに思いつくものだ。
以前、「KAGEROU」(齋藤智裕著)を読んだ時にも、「自殺センター」という発想が書かれていた。この作品では臓器移植と関連させていたので、非常に興味深く読んだのだが、本作では、臓器移植の問題は「反対者がいるからね」という非常に現実的な理由であっさり否定されていた。
そう、本作はとてもリアリティがある。もし本当にこういう施設があったら、やっぱりものすごく反対運動が巻き起こるだろうし、宗教関係者もいろいろ活動しようとするだろう。当然、臓器移植だって拒否されるに違いない。
5回、という設定も絶妙だと思った。短すぎず長すぎず、でもいざとなるととても短く感じてしまう。
主人公の絶望とか諦観がじわじわと伝わってきて、この世界に引き込まれてしまった。
もう少し、夢の処理や、切断魔の存在する意味が書き込まれていたらもっとよかったかなあとも思う。ラストはどうなったのかがちょっとわかりづらい気がする。そこだけ急にファンタジーな感じになってしまったように思う。
本作も、「KAGEROU」もラストは生きる方向に向かっていた。そこが、私が書いたものと違うところだ。
私が書いたのはショートショートだったので、ほんとにワンアイデアとして書いた。そしてラストは、清々しく死んでいくのだ。
そういうところに、作者の意向がにじみ出るものなんだろうか。
それでも、ここまできっちり世界を構築してあると、やはりラストは希望の方向へ行く。
「なんだよ~」と思いながらも、ほんの少しホッとしている部分もある。
キャラクターの扱い方がときどき腑に落ちないところもあったが、とても読み応えがあって、小説世界に魅了された。
- 感想投稿日 : 2013年1月22日
- 読了日 : 2013年1月22日
- 本棚登録日 : 2013年1月22日
みんなの感想をみる