ナオミとカナコ

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本棚登録 : 2310
レビュー : 427
著者 :
片山るんさん 新刊   読み終わった 

読了直後でまだ心臓のドキドキが止まらない。
ラスト一行でほっとしたけれど、すぱっと駆け抜けた感じなので余韻が消えていかないのだ。

ついこの間「紙の月」という映画をみたばかりで、またしても「逃げ切る!」というタイプのお話。
なぜか映画にも本作にも、非難めいた気持ちは持たなかった。むしろ共犯者となり、「逃げろ!早く!」と居ても立っても居られない気持ちでページをめくった。指が震えた。

最初はナオミのほうから話が始まる。物語の始まりなので、若干気が重かった。つらく憂鬱な現実がこれでもかと描き出される。朱美社長とのトラブルもまたうんざりした気持ちになるものだった。

ところが、朱美社長とのやりとり、特にナオミが彼女に親近感を抱き始めるところから、小説の雰囲気が変わり始めた。読んでいる私も、あきれつつも朱美社長に好感を持ち始めた。突き抜けたら案外好きになれるものかもしれない。
「腹をくくる」ということの清々しさということを考えた。うじうじ、後ろ向きに、被害者的に物事を考えていたら悪いほうにしか進まない。済んだことは割り切って、これからどうするかを考える。この途方もない前向きさとエネルギーが、物語に明るい光を投げかける。
カナコの章になると、風雲急を告げる展開になる。
クリアランス・プランのずさんさが次々にあぶりだされるのだが、このあたりのほころび方がなんともリアル。
読者として読めば「どうしてそんなことに気づかないのか」とか「「なぜそこで高を括るのだ」とじりじりしてしまうが、もし実際に自分がその立場だったら、きっとこんなふうになってしまうんじゃないかと思わせるから。
暴力夫から逃れることについて、他人は簡単に「逃げればいい」とか「離婚すればいい」というけれども、自尊心が根幹から破壊された人間には、そういう選択肢はあり得ないのだ。殺されてしまってから初めて同情するのが傍観者。「殺されていい人間などいなのだ」というなら、DVで殺されてしまう人の立場はどうなるんだ。

序盤であっさり殺されてしまうカナコの夫。彼の母親や妹の造形を見ると、ああ、こういうタイプの家系なのかと納得できるように描かれている。
「母の愛」を絶賛する人は、カナコの夫の母親の姿が理想なのかな。まさにあれは「母の愛」だと思うが。
女の強さの、いろんなパターンが描かれていて、非常に興味深かった。

レビュー投稿日
2014年12月1日
読了日
2014年12月1日
本棚登録日
2014年12月1日
3
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