燃ゆるとき (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店 (2005年9月22日発売)
3.54
  • (26)
  • (41)
  • (55)
  • (14)
  • (2)
本棚登録 : 447
感想 : 43
4

「燃ゆるとき」
高杉良作
2005年
角川書店
(初出版は1990年、実業之日本社)

「まんぷく」がヒットする中、インスタントラーメンはモデルの安藤百福が考えたのではない、という噂がネット上を飛び交うようになっているけど(そのことも書いてある)、ここで、実名企業小説でおなじみの高杉良の古い小説を読んでみた。日清食品を痛烈に批判したとされる「燃ゆるとき」。マルちゃんの東洋水産の創業から成功までの話だけど、実名は東洋水産や政治家の名前だけで、あとは誰でもわかるような仮名。例えば、日華食品の安東福一、村野証券と言った具合。しかし、最後の解説で中沢孝夫兵庫県立大学教授(当時)が、実名と照らし合わせて解説し、東洋水産が一時子会社となっていた三井物産と日清食品を辛辣に批判している。実名小説だし、書いてあることは基本的に全部事実だと思っていいかも。

以下、メモ

第一物産(現在の三井物産)。この商社の汚さには反吐が出るが、詳しくは本書を読んでもらう以外にない。起業家の苦労を知らないサラリーマン根性の悪さ丸出しである。さんざん東洋水産に儲けさせてもらいながら、下請け扱いどころか、泥棒のような社員を「経営監督者」に押し込んだり、巨額な負債を隠して、ゴミ会社と合併させたり、トンあたり六万円から七万円が普通の建設コストの冷蔵庫を十二万円でつくらせたり、不良品の冷蔵設備を買わせたりと、とにかくめちゃくちゃなのである。<中沢氏解説より>

東洋水産がアメリカ進出をした。その時、N新聞(日経新聞)が「日華食品(日清食品)が米国で特許を確立し、輸入差し止め権も。東洋水産など大打撃」と昭和51年6月に報じた件に関して・・
N新聞は裏付けもなく書き、日華食品のお先棒をかついだ。事実関係は本書の中にあるとおりで、日華食品が特許を取得した事実はなく、全ての行動が東洋水産への妨害活動でしかなかった。裁判で危うくなったら、今度は和解工作に来た。相手側に森和夫(東洋水産創業者)はこういう。「安東社長は臆面がなさ過ぎます。わたしは恥を知らない人間だけにはなりたくないと思っています」。こんなことまで森にいわれる相手側(日華)の担当者もたまったものではないが、まったくの嘘をリークするばかりか、嘘の広告まで新聞に掲載したのだから、安東福一(安藤百福)の神経の凄まじさに驚くのである。<中沢氏解説より>

インスタントラーメンを発明したのは自分だと吹聴していますが、事実に反します。鶏糸麺としてはじめに発明したのは陳という人で、安東さんはそれを盗んだんですよ。お話にならないくらいえげつない人なんです。(本文292P)

フクイチアントウさんは一九五五年ごろ、大阪の信用組合の理事長をしていたのですが、信用組合の資金を小豆の買い占めに注ぎ込んで、背任罪で起訴されたのです。執行猶予になりましたが、犯歴であることには変わりません。(本文301P)←ドラマでは2度逮捕されているが、いずれも冤罪扱い。それとは別の話もあったのか?

アメリカでの特許侵害訴訟で嘘がばれてきて、負けが濃厚になった日華食品は、和解案を提示してきた。そこで、米国進出している先輩企業に挨拶料を払えと1億円を要求。東洋水産の森社長は、マフィアかヤクザでもあるまいし、と怒る。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年3月29日
読了日 : 2019年2月12日
本棚登録日 : 2021年3月29日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする