蒼い時 (集英社文庫)

  • 集英社 (1981年4月20日発売)
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蒼い時

著者:山口百惠
プロデュース:残間里江子
発行:1981年4月25日
集英社文庫
単行本(集英社)は1980年9月発行

知らなかった。今回、初めて気づいた。山口百恵ではなくて、山口百惠だったとは!恵じゃなくて、惠だった。それともこれはペンネームなのか?表紙と奥付は「百惠」だが、本文中は「百恵」になっていて、最後、あとがきに近い文章の締めくくりには、「倖せになります 山口百惠」となっている。画数でも気にしているのかも。本が売れますように、って。

この本(単行本だった)は、大学生のころに出て、メチャ売れ、よく行く喫茶店にも置いてあった。僕は山口百恵に興味はなかったので読まなかった。手に取ることもなかったかも。その喫茶店のママは(性的)初体験のこともオブラートに包んで臭わせているのよ、みたいなことを言っていたが、今回読んでみると別にオブラートにも包むこともなく、ハッキリと書いてあった。

仕事を重ねるうちに山口百恵は三浦友和を好きになっていたが、ある日、三浦から告白されて電話番号を渡された。しかし、電話をする勇気がなく1月半たったころ、電話が欲しいというような請求をされ、初めて電話をした。そして、電話だけの交際がはじまり、8ヶ月後に結ばれた、と書かれている。しかも、本を書いている段階(21歳)で、三浦友和しか男は知らないとも書いてある。

盛夏。暑い日だった。
濃紺のワンピース。白い小さなブローチ。
貫くような蝉の声。加湿器の白い霧。
ギターの弦を弾く音。
And I love her
―その日、私はごく自然に女になった。


この本は単行本で200万部、文庫でも100万部売れたみたいだが、最大の売りは山口百恵の出生と性が書かれていることだった。そんなことぐらい誰でも知っていると言われそうだが、興味がなかった僕はこの本で初めて知った。彼女の父親は、母親とは婚姻関係がなく、〝本妻〟が別にいた。彼女と妹はその血縁上の父親に認知はされていたが、いつもいるわけではなく、金銭面でも不充分だったようで、生活費は母親が内職で工面していたという。ラジオ部品の組み立て、人形の洋服づくり。百恵も子供のころに手伝ったという。生活保護で暮らした時期もあったようだ。

父親は来ると彼女を散歩に連れ出してくれたが、その時に「こわいおばさん」が現れたそうだ。恐らく〝本妻〟なのだろう。父親はお金にとてもだらしない人で、彼女の所属プロダクションに借金を何度もしていた。足利の「娯楽センター」に勤めていたとあるが、この娯楽センターがなんたるかは不明。そこに百恵の所属プロからタレントを入れたが、そのお金も払っていなかったという。

さらには、親の立場を利用して、百恵の意志も確認せず、プロダクション移籍の話を進め、移籍料を横領していた。入院している病院にマスコミを呼んで、自分勝手な記者会見を開いて、所属プロの悪口を並べ立てたようだ。

貧しかったから芸能界に入って家計の役に立とうとした、という噂がマスコミで広がっていたらしいが、この本ではきっぱりと否定。子供がそんなことを考えるはずがない、と。単に歌が好き、歌がうまいと言われたから、スター誕生に出ただけ。残るとは思わなかったがテレビ出演し、審査員から「歌手としてはむり」というように言われたが、最後には10数社からスカウト希望が上がった。

14歳の少女にとって、生理周期を知られるのはかなり嫌だったことだろう。しかし、水着での仕事の関係でどうしてもスケジュール調整しなければいけなかった。ただ、タンポンは使いたくなかったので、なんとか調整してもらっていたが、担当が変わり、その人からの配慮のない一言により、これ以上は生理周期を知られたくないと感じてタンポンにしたという記述がある。

三浦友和から正式にプロポーズされてはいなかったが、この人と結婚するだろうなと漠然と感じていたある日、ベッドに入って眠りにつく時間に「結婚したら仕事は辞めよう」と思った。それは直感としか言いようがなかったという。そこから、夢に見た光景が現実にあったとかいう変な方向の話があったり、また、その当時にはやっていた「翔んでる女」やキャリアウーマンといった言葉、形ばかりの自立する女性像に対する疑問を呈したりして、自分の決意を補足している。

前半に、出生、裁判(芸能人交歓図裁判)、恋、性体験、結婚、引退について書かれていて、後半になると、随想として、20話ばかりのエッセイが綴られている。UFOを見ただの、今風にいうと幽体離脱の体験談だの、幼い話も含まれる。

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三浦友和と共演して映画に出始めた。百恵は女優になりたいと思うようになっていた。芸能界には、歌手よりも女優の方がより知的だという不文律のようなものがあった。

桜田淳子とは品川中学で一緒に机を並べた仲良しだったが、似ていると言われていて、双子や姉妹だとも言われた。テレビのディレクターですら、桜田淳子のところにいって「百恵ちゃん、音合わせね」と間違えることもあった。

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それにしても、残間里江子がいまだにこの本を自分の看板に使っている。ことがあるごとに話を持ち出している。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年5月15日
読了日 : 2023年5月15日
本棚登録日 : 2023年5月15日

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