陰謀の日本中世史 (角川新書)

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レビュー : 18
著者 :
iadutikaさん  未設定  読み終わった 

陰謀の日本中世史

呉座勇一著
2018年3月10日発行
角川新書

著者は47万部を超えるベストセラー「応仁の乱(中公新書)」を書いている若手の学者。あの複雑怪奇な応仁の乱がこれを読めばよく分かると期待して読んだものの、ますますややこしくなって応仁の乱のマスターを断念したという人は、私を含めて少なくないはずだ。
この人は文に修辞が多すぎる。余分な情報を入れすぎる。
「××のAと○○のBの仲介にCが入った」いう説明をする場合に、「□を前年まで務めていた××のAと、△△家の出でAの妻も出が同根である○○のBの仲介に、◇◇の生まれで▼▼の部下でもあるCが入った」という具合に余分な説明まで入れてしまう。張り切り過ぎて何でもかんでも説明に入れてしまおうとする地域の観光ボランティアガイドにありがちな説明だ。

ただ、この本、「応仁の乱」でよく理解できなかった人にお勧めしたい章がある。応仁の乱について、第5章で30ページほどにまとめている。この部分だけを読んでもいいかもしれない。中公新書版よりよく分かった。

さて、いつの世にも、どんな分野にも、陰謀好きはいる。情報や知識の断片だけに触れ、全てを理解できたように錯覚する。自分では科学的と思っているけど、実際はその逆。
古くからあるものでは、フリーメイソンやロスチャイルドなど、ごく一握りが世界を牛耳っている・・・一体、いつになったら彼等は姿を現すねん?と聞きたくなる。
最近では、LINEはKCIAの陰謀だとの説も。本気で信じている人がいるが、これは超右派のモラロジー研究所所長、西岡力が言っているに過ぎない戯言であることを知っている人も多い。

日本史においてもそんな陰謀論は山ほどある。有名なのは、義経が生き延びてジンギスカンになったという話。この本では、さすがにその話は問題にしていないが、日本中世史においてよく言われる陰謀論めいた内容について、歴史学者として証拠の史料を示しつつ、解説をし、冷静に考察をして、そうしたものの多くを否定していく内容。

保元・平治の乱、義経は陰謀の犠牲者説、足利尊氏陰謀家説、日野富子悪女説(応仁の乱)、本能寺の変に黒幕がいた説、石田三成は家康にはめられた説などを取り上げている。
来年、大河ドラマの主役となるのは明智光秀。おそらく、「自分だけは日本史の真実を知っている」と思い込んでいる歴史好きが、いろんな黒幕説を闘わせることだろう。この本を読んで、そのほとんど全てに無理があることを知っておくのもいいかもしれない。

陰謀論には、パターンや特徴がある。
・加害者(攻撃側)と被害者(防御側)の立場が実際には逆である可能性を探る手法(警察にはめられた、と言い逃れをする犯人と同じ)
・結果から逆算した陰謀論(勝者が仕組んだ陰謀だった、という説は、結果を知っているから言えること)
・事件によって最大の利益を得た者が真犯人である、という推理テクニック
・特定の個人・集団の筋書き通りに歴史が動いていくという典型的な陰謀論

著者は言う。もし、本当にそんな陰謀だとしたら、仕掛けた者は先の先まで結果を完璧に読み、一切の間違いもなしに実行していく天才でなければならないと。
まったくその通り。陰謀論は冗談だけの世界にしておかないと、後で恥ずかしい思いをすることになる。

この本は、細かい話が多くて読んでいて飽きてくるが、史料を丁寧に説明してくれるので、学校で習ったりして”常識“と持っていたことに誤りがあることにも気づかせてくれる。例えば、応仁の乱は、ライバル同士、山名宗全と細川勝元の争いだと理解していたが、実は2人は仲がよく、戦いが始まろうとしている時でもまだ近い存在だったと解説されている。面白い部分もあった。

(メモ、本能寺の変の黒幕説)
・朝廷黒幕説
・足利義昭黒幕説
・イエズス会黒幕説
・豊臣秀吉黒幕説
→もちろん、どれもあり得ないと結論

レビュー投稿日
2021年3月29日
読了日
2019年7月24日
本棚登録日
2021年3月29日
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