車輪の下 (新潮文庫)

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本棚登録 : 6661
レビュー : 638
制作 : Hermann Hesse  高橋 健二 
みボさん 小説   読み終わった 

かわいそうなハンス。さみしいハンス。誰にも慮られることなく冷たくなっていくハンス。ハンスがたどる運命の道はわたしがかつてたどりそうだった道だけに読んでいて同情してしまった。教育というものは大事だけれどそれよりも遊んでこの世の歓びを知ることはもっと大事だということをこの本は教えてくれる。少年期の心の浮き沈みを書いた本は多いけれど、これほど冷静に振り返っているものは初めて読んだ。
かなり昔の本だし、読むのに苦労するだろうなと思っていたけれど、文語体なのにテンポがいいのか読みやすくてあっさり読了。

(以下、好きなところ抜粋)
彼はきわめて利口であったから、精神的な所有というものはすべて相対的な価値しかないということを忘れなかった。/彼らの中にはには、平等の意識と同時に、独立を望む心が現れた。そこにはじめて、多くの少年の子供らしいまどろみの中から、個性形成の芽ばえが目ざめたのである。筆紙には書けないような愛着としっととのささやかな場面が演ぜられ、それが発展して友情の契りになったり、おおっぴらにいがみあう敵意になったりした。/これを見たおとなの人があったら、このささやかな情景と、はにかんだ友情の表示のぎこちない内気な愛情と、ふたりの少年のまじめな細い顔とに、おそらくひそかな喜びを感じただろう。/ふたりの早熟な少年は友情の中に、初恋の微妙な神秘の一端を、わくわくする恥じらいをもって無自覚ながら、すでに味わっていたのだった。そのうえ、ふたりの結合は成熟する男の苦味のある魅力を持っていた。また同様に苦味のある薬味として、仲間全体に反抗心を持っていた。みんなにとってはハイルナーは親しめない男で、ハンスは不可解な男だった。それに、みんなのあいだの多くの友情は、そのころまだすべての無邪気な少年の戯れにすぎなかった。/先生たちが最も恐れるのは、それでなくても青年の発酵の始まる危険な年齢のころに早熟な少年に現れる異常な現象である。

レビュー投稿日
2019年5月13日
読了日
2019年5月11日
本棚登録日
2019年5月11日
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