紙の月 (ハルキ文庫 か 8-2)

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2014年9月13日発売)
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感想 : 869
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手が止まらないほどおもしろかった。全能感も焦燥感も窮屈な感じも息苦しさも、全部全部うっすらとわかる気がした。働きだしたら/結婚したら、もっとわかるようになるんだろうなと思った。
むちゃくちゃおもしろかったけどむちゃくちゃ落ち込みもした。梨花も、木綿子も、亜紀も、みんな自分になりうると思った。わたしはブランドものとかデパートに売っているものを買うことに関して関心がないけれど、年齢を重ねてそうなっていくかもしれない。あるいは働くようになることによって。
わたしもアルバイトの数万円の変動でだって(先月は8万円だったのに、今月は6万円、、、)と、以前は6万円でも十分に暮らせていたはずが、収入が増えたことにかまけて余分に美容や買い物にお金を掛けたせいで、なんだか物足りなくなることがある。貯金もパーっと使ってしまいたくなることがある
お水で働いてたくさんの稼いでいる友だちは、辞めた後きちんと暮らしていけるんだろうか、、、みたいなことを少し考えてしまった。一度の贅沢はその後の窮屈さを生み出してしまうんだろう、牧子のつらさもなんとなくだけどわかる。木綿子の子どもは締め付けたことでもっとお金に貪欲になるし、亜紀の娘もきっともっと貪欲になるだろう。「お金」というただの紙(生活に必要なのでされど紙でもあるけど)に踊らされず、収入水準に見合った生活を過ごしていかなきゃいけないな、と思う、その点わたしはデパートのコスメを買っているわけでもないのにどうしてこうなっているのか不思議だけど、、、

これは「きみはいい子」を観たときと同じ感じのような気もするな、「わたしもいつか子どもを叩いてしまうかもしれない」、「節約に狂ってしまうかもしれない(今は持ち家へのこだわりはないが)」、「いつかブランド物の服やコスメやアクセサリーに狂ってしまうかもしれない(今はこだわりはないが)」、そして「いつか将来の夫が自分を対等な存在として認めてくれなくなる/抱いてくれなくもなる時が来るかもしれない」、すべて"そちら側"に陥る可能性が平等にあり恐ろしい、本自体にそういう意味で漂う不安感や窮屈さが充満していて、とてもおもしろくもあり感じの悪い本だった(いい意味で)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年10月28日
読了日 : 2018年6月14日
本棚登録日 : 2018年10月28日

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