1973年のピンボール (講談社文庫)

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本棚登録 : 1818
レビュー : 155
著者 :
いけださん 本・雑誌   読み終わった 

本作を読むと、ピンボールがしたくなって困ります。

まだ初期作品らしい、つっけんどんさが堪らない作品です。
ぶつ切りで纏まりの無い作風も変わっていません。
それなのにも関わらず、流れるように読めるというのはすごい事です。

本作から、村上春樹氏の持ち味である「比喩」の巧みさが多く見られるようになります。
ある何かを、独特の表現で見事に言い表す手法は、他の追随を許しません。

本作の中には、村上作品の魅力を表す一文があります。<BLOCKQUOTE>文章はいい、論旨も明確だ、だがテーマがない</BLOCKQUOTE>確かに、論文としてであれば、これは致命的でしょう。
けれど文学としては、これは長所になり得るものだと思います。
現に、村上氏の作品にとって、これは明らかな長所です。

とはいっても、themeが全く無いわけではありません。
幾つかの「薄い」テーマが重なり合って、本作は成立しているからです。
ただ、そのthemeは、一般的にはthemeにはなり得ないものばかりなだけです。

魅力的なものは沢山あります。
美味しそうなビールであったり、愛嬌あふれる双子であったり。
そして何よりも、「スペースシップ」というピンボール。

たぶん、村上作品に共通して言える事だと思います。
どんなに言葉を尽くしても、この魅力は絶対に伝わらない。
そこに描かれた作品を読み、その"beat"を感じなければ。
その"beat"に共鳴できた人のみが、この作品の持つ「何か」を「飲める」のだと思います。

決して難解な作品ではありません。
むしろ安易で、軽くて、取りとめの無い薄っぺらい作品と言えるかも知れません。
けれど、本作を「飲んだ」人にとっては違うのです。
確実に「何か」を受け取り、積み重なっているはず。
そしてそれこそが、村上作品の魅力、そのものだと思います。

レビュー投稿日
2018年11月13日
読了日
2007年11月21日
本棚登録日
2018年11月13日
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