2024年1月28日
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塗仏の宴 宴の始末 (講談社ノベルス)
- 京極夏彦
- 講談社 / 1998年9月17日発売
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2024年1月19日
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塗仏の宴 宴の支度 (講談社ノベルス)
- 京極夏彦
- 講談社 / 1998年3月27日発売
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2024年1月17日
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絡新婦の理 (講談社ノベルス)
- 京極夏彦
- 講談社 / 1996年11月5日発売
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個人的な百鬼夜行シリーズ再読キャンペーン5作目。
初読時に度肝を抜かれた本作、再読でどういう感想を持つだろうと楽しみに読んで、やっぱり傑作であると改めて思った。「作品」として、日本エンタメ小説史上に残る一冊。文学賞を受賞していないのが不思議。鉄鼠の檻や狂骨の夢の読後感が霞んでしまったのは、間違いなくこの作品の影響だったのだろうなと。
緻密に構成されたプロットと、十重二十重に張り巡らされた伏線、陰惨で「映える」凄惨な事件の数々、魅力的なキャラクター、フェミニズムと民俗学の高い次元での融合、エンタメ作品として極上すぎるほど極上と思う。
一方で、「物語」としては、改めて読むとそこまででもないかもな、と思ったりも。「作品」としての壮大な仕掛けがあまりにも見事すぎるため、物語として肉付けされるべき構成要素が排除された感がある。たぶん、この1.5~2倍くらいの分量に膨らませることが出来るレベルのポテンシャルを秘めていると思う。あえて削ったのか、或いは単にしんどくなったのか。後者かなあ。
次は塗仏の宴。これもあまり記憶にないので、ほぼ初読に近い感じで読める気がする。初出は絡新婦の理の2年後に出版されているから、当時は絡新婦の理から連続しての読書って感じでもなかったはずで、フレッシュに続けて読める今だからこそ感じる感想がある気がする。楽しみ。
2024年1月13日
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文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)
- 京極夏彦
- 講談社 / 2001年9月6日発売
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個人的な百鬼夜行シリーズ再読キャンペーン4冊目。
シリーズ内であまり記憶に残っていない作品だったのだけど、再読して、「物語」としての記憶はあまり残っていなかったものの、「作品」としては身体に染み込んでいたことがよく分かった。この作品をきっかけに、禅というものへ傾倒しかけたのだった。「禅」そのものの衝撃があまりに大きくて、物語が霞んでしまったのかなあと今なら思う。
あれから、禅についての知見を深めてからの再読となったので、より深くこの作品を味わえたように感じる。そして、禅が骨格となっている「物語」も、当時より印象的で面白さが増したのだろうと感じた。いやもう、抜群に面白い。途中で思わず本を置いて「面白いなあ!」と声を上げてしまった。
再読でここまで4冊ぶっ続けに読み進むなかで、関口巽というキャラがあまりにも愚かしく描かれていて、「道具立て」としてなのかなあと思いつつ、このような人物と京極堂が長年に渡り付き合う関係性なのは流石に不自然では、と感じていたのだけど、それは違うんだなと本作で気が付いた。京極堂というのは、あまりにも「見え過ぎてしまう」人なので、関口のような「空気の読めなさ」と、一見愚かに感じさせる(実際に愚かでもあることも多い)感性に呆れながらも、だからこそ付き合い続けているのかなと。それは、庇護者としての、或いは玩具としてのそれではなくて、「いろいろなものが見えすぎてしまう」からこそ、「その時」は苛立つのかもしれないけれど、むしろ京極堂の方こそが、関口への想いが強いのかなと感じた。それはきっと、榎木津も同じなのかもしれない。根本的に善性の人であることは間違いないし。
次はいよいよ絡新婦の理。稀代の傑作という印象と大まかな内容は覚えているものの、細部はやっぱり忘れているので、再読が本当に楽しみ。
2024年1月12日
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狂骨の夢 (講談社ノベルス)
- 京極夏彦
- 講談社 / 1995年5月9日発売
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個人的な百鬼夜行シリーズ再読キャンペーン3冊目。
初読のときの感じを読了後に出して、ああこんなだったなあ、と。姑獲鳥の夏、魍魎の匣、絡新婦の理に比べて、狂骨の夢と鉄鼠の檻は、印象が薄い。再読して、エログロな悪趣味度で言えば魍魎の匣にも負けずとも劣らないと思うのだけど、だから二番煎じ感があって、ちょっと興が削がれたのかな。物語としてのまとまりも、前2作に比べると一歩劣る感じがあるのかも。
ただ、歳を取ってからの再読で、初読のときには(おそらく)気付かなかった本作の深みというか、面白味みたいなものが分かった気がする。歴史の重みすらも「憑き物」として落としてしまう京極堂の凄みとか。
鉄鼠の檻は次に再読するのでどういう感覚を覚えるか楽しみ。
2024年1月10日
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個人的な百鬼夜行シリーズ再読キャンペーン3冊目。
初読のときの感じを読了後に出して、ああこんなだったなあ、と。姑獲鳥の夏、魍魎の匣、絡新婦の理に比べて、狂骨の夢と鉄鼠の檻は、印象が薄い。再読して、エログロな悪趣味度で言えば魍魎の匣にも負けずとも劣らないと思うのだけど、だから二番煎じ感があって、ちょっと興が削がれたのかな。物語としてのまとまりも、前2作に比べると一歩劣る感じがあるのかも。
ただ、歳を取ってからの再読で、初読のときには(おそらく)気付かなかった本作の深みというか、面白味みたいなものが分かった気がする。歴史の重みすらも「憑き物」として落としてしまう京極堂の凄みとか。
鉄鼠の檻は次に再読するのでどういう感覚を覚えるか楽しみ。再読了日:2024年1月10日
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魍魎の匣 (講談社ノベルス)
- 京極夏彦
- 講談社 / 1995年1月5日発売
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個人的な百鬼夜行シリーズ再読キャンペーン2冊め。
いやあ悪趣味!悪趣味極まりない!
でも、このグロテスクさが、京極夏彦という作家を押しも押されぬ大作家へと押し上げたんだろうなあと思う。桜玉吉なんかも完全に憑かれて、作品で「ほう」を出しちゃった(しかもレギュラー)くらいだから。多感な時期にこの作品に出会ってしまったことで、自分は大きな影響を受けたのは間違いないだろうと思う。いろんな意味で凄すぎる作品。
2024年1月9日
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個人的な百鬼夜行シリーズ再読キャンペーン2冊め。
いやあ悪趣味!悪趣味極まりない!
でも、このグロテスクさが、京極夏彦という作家を押しも押されぬ大作家へと押し上げたんだろうなあと思う。桜玉吉なんかも完全に憑かれて、作品で「ほう」を出しちゃった(しかもレギュラー)くらいだから。多感な時期にこの作品に出会ってしまったことで、自分は大きな影響を受けたのは間違いないだろうと思う。いろんな意味で凄すぎる作品。再読了日:2024年1月9日
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文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)
- 京極夏彦
- 講談社 / 1998年9月14日発売
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「鵼の碑」読了を機に、改めて初めから再読中。
記念すべき第1作。やはり名作。
読んだのが遠い昔なので細部は全く覚えておらず、どんな話だったかなあと思いながら読み進む。読んでいてつくづく思ったのが、本当に文章が巧い作家だなあということ。現時点で、自分にとって日本一文章が巧い作家は「図書館の魔女」の高田大介なのだけど、京極夏彦はその文章に近い。なんというか、「文章だけで勝負できる作家」だと思う。と言っても高田大介の文章とは似ておらず、物語世界を文章で組み立てていく、と書くと、そりゃそうだろって話なんだけど、文体とか構成とか語り口とか、そういった「文章」そのものが、この読んでいて目眩を感じるような、妖しく幻惑される物語世界を生み出している、といっても過言じゃないと思う。これだけの物量を一気に読ませる筆力は、やはり只者じゃない。
なお、高田大介の文章については氏の作品感想で書いてるので割愛。
筋立てや蘊蓄についても流石の一言。見事なキャラ立てと驚天動地なクライマックス。トリックは清涼院流水みが無きにしもあらずで、そんなのあり?って感じではあるけれども、まあ、そこが持ち味の作品ではないからね。再読して、改めて面白い作品だったと噛み締めました。
2024年1月7日
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鵼の碑 【電子百鬼夜行】
- 京極夏彦
- 講談社 / 2023年9月14日発売
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発売当日に購入したものの、なかなか読めずに積ん読化してしまっていたものを、年末年始の帰省中に一気読み。
久しぶりの京極夏彦なので、過去作の細部が朧気で、何とかの事件、みたいなワードが出てきても、それはあれか?みたいなあやふやさのままで読み進めました。幸いなことに登場人物の人となりや過去作の大枠までは忘れていなかったので、これこれ、と思いつつ(にしても、関口はここまでポンコツだったっけ……)。
複数の視点、複数の事件が入り乱れつつの展開で、それらが徐々に徐々に収束していく展開は流石の一言。じわじわと輪が狭まっていくかのようなゾクゾク感。半分を過ぎたくらいで概ねの予測は付いたものの、物語の着地はさっぱり読めず、どういう展開になるんだろうと思っていたら、なんとそう終わらせるのかという解決編。いやあ、この展開はさすがに想像してなかった。
「結局のところ何もありませんでした」という結末に、ここまで満足を感じさせるのは凄すぎ。あっちにふらふら、こっちにふわふわ、という酩酊感のような構成は、さすが京極夏彦と感じさせてくれました。この長大なボリュームを費やすことで、まさに「鵼」を文章で浮かび上がらせた、という感じ。
とりあえず、過去作を初めから再読していこうと思います。
2024年1月2日
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アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風
- 神林長平
- 早川書房 / 2022年4月20日発売
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このシリーズは、もはやSFという枠を超えた何かだと思う。
神林御大の作品はどれもそうだけど、人と機械知性の関わりという形を取った哲学書のようにも思える。「ものがたり」という形を取ることでしか表現することの出来ないものがあるのだなあと実感させてくれる。
もちろん、そういう理屈っぽい部分が本質ではなく、あくまでも主体はエンタメでありSFであるところが最高に格好いいわけですが。
タイトルの「アグレッサーズ」は、敵部隊のように振る舞うことで戦闘をシミュレーションする役割を持った舞台のこと。
と書くだけで、ここまで雪風の物語を追ってきた読者はどういうお話になるのか容易に想像できると思う。本作では新しいキャラクタが登場して、物語の奥行きを広げている。こういうキャラクタを生み出せるのがマジで強いなと実感させてくれる。
本書はなかなかのボリュームではあるものの、ここから始まる新しい展開の導入部という感じかなと読後に感じた。シリーズの幕引きに向けて進んでいくのかなと感じられるけど、どうなるか本当に楽しみ。
2023年2月26日
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空白を満たしなさい(下) (講談社文庫)
- 平野啓一郎
- 講談社 / 2015年11月13日発売
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空白を満たしなさい(上) (講談社文庫)
- 平野啓一郎
- 講談社 / 2015年11月13日発売
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感想は下巻で。
2022年8月1日
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流れよわが涙、と孔明は言った
- 三方行成
- 早川書房 / 2019年4月25日発売
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冒頭のインパクトをWebで観て、興味を覚えて買ってみた。
徹頭徹尾不条理系で、ちょっと胸焼けした。
インパクトだけ、という感じかなー。
2021年12月21日
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カーテンコール! (新潮文庫)
- 加納朋子
- 新潮社 / 2020年8月28日発売
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2021年9月11日
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隣のずこずこ (新潮文庫)
- 柿村将彦
- 新潮社 / 2020年11月30日発売
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いやあ凄いものを読んだなあと。活き活きと細部が描かれ、生活の匂いが行間から香り立ちそうなほど艶めかしいのに、ちょっと離れて全体を眺めようとすると、薄ぼんやりとした霞に包まれてしまう感じ。なんとも不思議な読後感。分かるけど分からない。分からないのに分かる。明晰夢な白昼夢を見ていた気分。
うまく言葉で感想をまとめることが出来ないけど、この作品を長編としてまとめ上げた手腕の見事さに舌を巻く。くどくどと長ったらしい感じを微塵も感じさせず、読後感は短編を読んだ時のそれに近い。
おそらく、これを映像化するのは大して難しくはないと思う。ラストだけCGでちょいちょいとやればいける。ただ、この作品の根幹とも言うべき空気感は、たぶん映像化できないと思う。まさに、小説という形態だから出来た表現。なんとも言えない居心地の悪さというか、仙台弁で言うところの「いづい」感じ。
いやあ凄いもの読んだわ。
2021年9月3日
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赤銅の魔女 紐結びの魔道師1 〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ (創元推理文庫)
- 乾石智子
- 東京創元社 / 2021年3月12日発売
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久しぶりに新作を読んだので、過去作との繋がりがぱっと浮かんでこず……。単語レベルで見覚えのある地名や何やらはあるのだけど。とはいえ、覚えていないと厳しいかといえばそういう事は特に無かったと思う。過去作同様、上質なハイファンタジィ。
本作はこれまでにないほど登場人物たちのキャラ立ちが素晴らしいので、これからの展開が楽しみ。
2021年9月3日
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はるひのの、はる (幻冬舎文庫)
- 加納朋子
- 幻冬舎 / 2016年4月12日発売
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ここ数年、ちゃんと本を読んでおらず、しばらく前に買い込んだ本たちも積んだまま手にも取らずに放置してた。何か理由があるわけではなく、例えばようやく地元に帰れたり、それに伴って通勤時間が激減したり、そうこうしてるうちに疫病が蔓延し始めて在宅勤務が続いたり、といった色んな要素が積み重なった結果かなと思う。まあ、その前から、若い頃に比べて本を読まなくなっちゃった所はあるのだけど。歳のせいというより、スマートフォンでのゲームとか、まあそういう諸々のあれがあれで。
ということで、しばらく前に購入したまま積んでいた本書をふと手にとって、読み始めたら止まらなくなった。気がついたら最後まで一気読みして、満足のため息を一つ。
昔から、ほんと初期の頃から加納朋子の大ファンなのだけど、こんなに巧かったっけと思ってしまうくらい、物語に引き込まれた。
連作短編で紡がれていく大きな物語というのは著者の持ち味で、伏線という意味では本作は決して巧みではない部分もあったように思うのだけど、そういうギミックではないところが本当に巧いなと唸らされた。
決して派手な作品ではないし、驚天動地といった大掛かりな仕掛けがあるわけでもない。静かに優しく滑らかに紡がれていく物語の手触りが、なんとも言えず心地いい。
個人的には、「はるのひの、あき」が最高だった。この展開はちょっと想像してなかったし、そうくるかあと唸りつつ感動で胸が一杯になった。
やっぱり加納作品はいいなあ、としみじみ思わせてくれました。オススメ。
あと、解説で書かれていたエピソードを読んで思わず吹き出し、読後の感慨がどっか行きましたw
2021年8月25日
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マルドゥック・アノニマス 5 (ハヤカワ文庫JA)
- 冲方丁
- 早川書房 / 2020年5月26日発売
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6を読んで買い忘れていたことに気付いたので慌てて買ってきてすぐ読んだ。
そして、このシリーズの特異さに改めて気が付いた。
このシリーズは、物語が時系列に並んでいない。
図書館の魔女で、書物は一定の向きを示している、といった感じのフレーズがあったけど、本書はそんなマツリカに対する挑戦状のようだ。
章の中の「塊」の単位では時系列に進んでいるのだけど、その「塊」が時系列には並んでおらず、まるでパズルのピースをバラバラに当て嵌めていくかのように、大きな物語の「部分」が、少しずつ、いろいろな場所から形作っていく。
そして、その「バラバラ」具体が非常に絶妙で、かなり突拍子のない飛び方をしているようでいて、実は繊細に調整された絶妙のバランスで配置されていると思う。
普通の小説なら、1巻飛ばして読んでしまったことを読み始めてすぐ気が付くと思う。たとえ、その前である2巻前の作品を読んだのが数年前の話で記憶が薄れかけていたとしても、感覚的に「飛んだ」ということは分かるはず。
しかし、本シリーズではその違和感があまりなかった。ただ、半分程度読み進めていくうちに違和感を感じ始め、読み終わったあとに、なにか足りない気がする。そして本棚に収めようとして、前巻を買っていないことに初めて気が付く。こんな経験はちょっとない。
それは、上述したように、そもそもが時系列に並べていない作品構成のためであり、パーツ配置が絶妙のバランスである証拠でもあると思う。
極めてエンタメ性の高いSF活劇であり、スクランブルのカジノのシーンで示されたような非常に高度な情報戦や駆け引きの面白さであったり、目を覆いたくなるような残虐性であったり、エンハンサーたちの斬新な特異能力と、その特異性を打ち負かすための戦略で、息をも付かせないド迫力な戦闘シーンなど、ただでさえ圧倒的な面白さなのに、文章技術としても特筆すべきものを試みているというとんでもない作品。
買い忘れたことで気付けたとも言えるので、良かった、と負け惜しみを一つ。
2021年3月21日
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マルドゥック・アノニマス6 (ハヤカワ文庫JA)
- 冲方丁
- 早川書房 / 2021年3月17日発売
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読み終わって本棚に入れようとして、あれ?ひょっとして5巻読んでない?って気が付くなど。
いや、ちょっとやっちまったなー。
確かに、読んでいて「あれ?そうだっけ?」と思うシーンもあったんだけど、たぶん自分が覚えてないだけやなと流してしまっていたっぽい。
5巻買いに行かなきゃ。
あ、それでも前提となる知識が一部足りていなかったとこもあるっぽかったですが、それでもなお、面白かったですよ。
ひりつくような頭脳戦と、エンハンサー同士のド迫力な戦闘シーンは圧巻。
2021年3月20日
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ここは今から倫理です。 3 (ヤングジャンプコミックス)
- 雨瀬シオリ
- 集英社 / 2019年4月19日発売
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ここは今から倫理です。 2 (ヤングジャンプコミックス)
- 雨瀬シオリ
- 集英社 / 2018年6月19日発売
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ここは今から倫理です。 1 (ヤングジャンプコミックス)
- 雨瀬シオリ
- 集英社 / 2017年11月22日発売
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NHKのよるドラを観て、これは原作も読まなきゃ、と思って即購入。
当初、3, 4巻は品切れだったので買えなかったのだけど、ようやく入手できたので一気読み。
ということで、現在発売されている部分についての感想を、1巻に記録しておく。
ヨースタイン・ゴルデルの『ソフィーの世界』という作品がある。不思議の国のアリスを下敷きにしたようなメルヒェンの体で、様々な哲学を横断的に紹介するような作品。発売当時はベストセラーにもなり、話題になったことを覚えている人も多いと思う。
自分がこの作品に出会ったのは、中学生後半のときだったように記憶してる。当時は読書の面白さに目覚めた時期で、図書室の本を片っ端から読んでいた。何が切っ掛けだったかは忘れてしまったけど、高価なハードカヴァであるこの本を読みたくて、お小遣いを貯めて買ったような記憶がある(誕生日プレゼントだったかも)。そして、この本を読んだことが切っ掛けで、自分は哲学という世界にどハマリしていくことになる。
関係のないことを書いた理由は、本書、『ここは今から倫理です』は、『ソフィーの世界』の漫画版かつ倫理版、と言っても良いのではないか、と。倫理や哲学といった分野は、先人たちが「より良い生き方」を模索し、七転八倒しながら積み上げてきた足跡そのもの。
時代とともに「正しさ」は変わるけれど、先人たちが積み重ねてきた「足跡」は、著作や考え方が残っている限り、いつでも参照することができる。ある時代の「正義」が誤った方向に向かい始めたとき、僕らは彼らの「足跡」を参照し、それを道標にしながら軌道を修正していくことができる。
本作の冒頭で高柳が話している通り、「別に知らなくてもいいけれど、知っておいた方がいい」「選択の余地はあるものの、実は必修科目」なのが、哲学であり倫理だと自分も思う。なぜなら、生きることは容易ではなく、人生へ真摯に向き合えば向き合うほど難しくなっていくから。
そんな困難な道程であっても、先人たちの「足跡」を辿ることで、いくらかでも困難さは軽減される。もちろん、先人たちが到達し得なかった現代においては彼らの足跡は付いていない。そこから先は、自分たちが道を切り開いていくしかない。しかし、過去から続く足跡を補助線として、僕たちは歩いていく方向を推測できる。
しかし問題点は、倫理や哲学といったジャンルが難解であること。先人たちが自らの内で葛藤し、絞り出した「言葉」は異質なもので、ある種の私的言語に近い。
また、高度な論理展開を駆使することで自らの言葉の正当性を世に示してしているため、基礎知識を身に着けていない場合は取っ掛かりすら掴めない。
だからこそ、本書のような「入り口」を示すことは、社会的に非常に有益なものだと思う。本書を読んで興味を持った人は、放っておいても知識を広げようと動き始める。ちょうど、高柳に救われたいち子がそうしたように。
「大きな物語」が消失して、秩序が崩壊しつつある現代だからこそ、本書のような作品が必要になっていると思う。
また、上記のような「意義」とは別に、学園モノの作品としても非常に良く出来ていると思う。思春期ならではの悩みや痛みに真正面から向き合い、上っ面な「優しさ」で誤魔化すことなく、一緒に寄り添う姿勢は素晴らしい。
偉人の名言ですべて解決、といった胡散臭さもなく、あくまで「道標」を示すのみに留め、解決は生徒それぞれに任せる。だから、結論が出ない回も少なくない。圧倒的に「正しい」と自分は思う。
とても素晴らしい作品だと思う。
今後も読み続けていきたい。
ちなみにドラマは来週3/13で最終回。
ドラマ版は漫画の良さを上手く引き出しつつ、映像表現で出来ることを巧みに取り入れていて、これも名作だと...
2021年3月7日
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ここは今から倫理です。 4 (ヤングジャンプコミックス)
- 雨瀬シオリ
- 集英社 / 2020年2月19日発売
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