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本とは何であるか。

本とは単なる物の名前ではなく、本というシステムである。
大事なのは物理的な紙というコンテナではなく、内容だ。

電子書籍の台頭を受け、紙の本がなくなるのかと嘆く人達がいる。
「紙をめくる体験」や「電池がなくなる」「目が疲れる」とか。
自分自身も似たようなことを思っていた。
しかしそれらは読書体験の質の低下を恐れる意見であって、デジタル化によって文章の意味が損なわれるという指摘ではない。
テクノロジーがデジタル媒体と紙媒体の差を縮め、付加機能が機能上の差を埋める。
デジタル媒体は必然的に紙の書籍を追い越すことになる。


本書は、書籍の未来について考える本だ。
オムニバス形式で30人弱の専門知識を持った人達が多角的に将来を考えている。



なんとなくの要約

・これまでの電子書籍への態度は、あくまで紙の本の延長上。
そのままコンバートするだけだった。
紙時代の常識を電子書籍に持ち込むのはやめて、もっと電子書籍の可能性を探らなくてはいけない。

・紙と電子書籍では発見性が違う。
本棚に並ぶ知らない本を見つけることは簡単だが、電子書籍の時代では詳しいデータを知らなくてはいけない。電子書籍は本のようなセレンディピティが存在しない。
電子書籍はメタデータ(どのようなコンテクストに位置するどのような本か)問いうデータを内包していく必要がある。

・DRM(デジタル著作権管理)は複製を禁じるシステムだが、仕組みは完璧ではなく、ぬけ穴が多数存在するばかりか、DRMによってユーザーの行動が制限されたり、あまつさえユーザー体験を損なっている。それらが海賊版の存在をより魅力のあるものにしている。

・コンテンツには、無形コンテンツと有形コンテンツが存在する、
前者はデバイスやサイズに依存しない(≒普通の文章)。後者は写真やグラフを含み、ページの物理的サイズを意識する。ページの大きさすらも制約と表現の一部として扱っている。

・本の未来
いままで : 読者は作品が確立されて初めて読む。構想から読者までの期間が長い
これから : 初期の段階からインタラクティブに。構想から読者まではより短く、出版社と作者はより不鮮明に区分される。

・本と電子書籍の間に差はなくなっていくだろう
・Webインタラクションは創作に大きな影響を与えた。二次創作や、リアルタイムのレスポンス、発見性。

・本とはソーシャルな活動だ。本を読むことによって我々は自らと異なる思想へと繋がっていくことができる。現実世界しかり、架空のキャラクターに共感したり、そういうものを読むことで理解できる(あるいは理解した気になる)。それこそが読書を通じて得られる最も深い繋がりだ。
それらの感想を共有することもまた大きな意味を持つ。感想の共有、解釈、議論を行う、そういう絆は大事にされるだろう。

・本であっても口コミが読むきっかけになる

・いずれ図書館はデジタルデータを貸す場所になるだろう。しかし、データは簡単な流通が可能で、大手にとって図書館に下ろす利益はない。よりニッチな作家や個人こそ、生き延びていくパートナーとなる



<収録内容>

Part 1 セットアップ:現在のデジタルへのアプローチ
1.コンテナではなく、コンテキスト
2.あらゆる場所への流通
3.「本」の可能性
4.メタデータについて語る時に我々の語ること
5.DRMの投資対効果を考える
6.デジタルワークフロー向けツール
7.デジタル時代の書籍デザイン

Part 2 将来への展望:本が歩む次のステップ
8.本とウェブサイトがひとつになる理由
9.Web文学:ソーシャルWeb出版
10.言葉から本を作る
11.eBookはなぜ書き込み可能になるか
12.読書システムの垣根を越えて:ソーシャルリーディングの今後
13.ユーザー体験、読者体験
14.本と出会ったアプリ
15.形なき本で図書館を作るということ
16.読者の権利章典

Part 3 本でできる実験-最先端プロジェクト-
17.作家たちのコミュニティ
18.アプリとしての本作り、迷った時の処方箋
19.エンゲージメント・エコノミー
20.本はどのように発見される?
21.「リトル・データ」の驚くべき力
22.誇張と倒錯
23.出版再考ーー痛みを感じ、痛みを抑える
24.公共図書館の終わり
25.今は実験のとき
26.忘れられた消費者
27.コントロールできない会話

レビュー投稿日
2017年6月12日
読了日
2017年6月8日
本棚登録日
2017年6月8日
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