いくつもの週末 (集英社文庫)

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  • 集英社 (2001年5月18日発売)
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読みながら、仕事と結婚は似ているかもしれない、と思った。

エッセイの中で彼女はこう述べる。「私はほんとうに臆病だなあと思うのだけれど、もうやめよう、と思うとほっとする。どんなことでも、幻だった、と思うのも一緒だ。いっそさっぱりする。」
いっそ過去にしたい、と思うのだろうか。全部過ぎ去ったことにして、忘れ去りたいと。

仕事を辞めて今の生活を過去にできたら、と思う。特に仕事をしていない時に強く思う。
こっちが本来の自分だ、と思うのだ。仕事中の自分は無理をしたもので、こっちがあるべき姿だと。

仕事がない生活を夢見るけれど、私は自分が仕事を辞めないことを知っている。ここらへんが江國さんの描く結婚生活と似ている。
きっと仕事を辞めたら驚くほどすっきりするだろう。踊り出したくなるような軽い足取りで家に帰る。辞めた日の帰路はいつもそうだった。そして同時に不安はひたひたと迫ってくる。どうせ働かずに生きていくことなんて出来やしないから。

将来への不安。勤めることの数少ないメリットはそれを忘れられることだ。
錯覚でも、このまま同じような生活が続いていくと信じられる。
未来を確約されたような錯覚に度々うんざりするけれど、でも私は知っている。それが勤めることの長所であることを。

学生の頃ずっと抱いていた専業主婦になりたいという憧れはもう薄れてしまった。ずっと家の中にいることを確約された未来だと思えるような時代ではないのだ。
1日の大半をマンションの高層階の静かな部屋で過ごす。儚い泡のようなそれが、私の逃避する夢の世界である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年11月20日
読了日 : 2019年11月20日
本棚登録日 : 2019年11月20日

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