芸術新潮 2013年 02月号 [雑誌]

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 小林秀雄没後30年の特集号。小林秀雄の愛した骨董、絵画、音楽、素顔などが紹介され、残された言葉からそのこだわりの源泉を浮かび上がらせる構成となっている。
 「昔の人だって美しいものも美しくないものも作ったのだ。そして美しいものだけが僅かに残ったのだ。美しいものだけを長い間かかって残した人々の智慧を骨董に読むのだよ」という骨董の見方にはまさに目から鱗が落ちる。骨董=アンチークではないと思い知らされる。長い長い年月をかけて、多くの人々の目に晒され、ふるい落とされ、ろ過されて、美しいものだけが残っているということ。これから骨董に対する接し方が変わりそうだ。
 小林秀雄の語り口について、落語評論家の京須偕充氏が、落語家の志ん生と比較しながら、「音楽評論家の吉田秀和も高く評価していた」と記しているのも目にとまる。『小林秀雄講演集』全8巻での語り口が耳元で響き始める。テンポよく歯切れのよい言葉がポンポンと飛び出し、切れ味は鋭く、しかしユーモアもあって引き込まれてしまう。話の中身も思索へと誘う深みがあって、何度聴いても聞き飽きない。高尚な落語そのもの。
 季刊誌『考える人(春号)』でも、「小林秀雄との対話」特集が組まれるとのこと。4月4日の発売が楽しみだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 雑誌
感想投稿日 : 2013年2月12日
読了日 : 2013年2月11日
本棚登録日 : 2013年2月12日

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