ポール・ド・マン――言語の不可能性、倫理の可能性

著者 :
  • 岩波書店 (2012年12月22日発売)
4.00
  • (5)
  • (2)
  • (1)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 72
感想 : 8

ポール・ド・マンの難解な思想を、言語の本源的な「アレゴリー」性を中心に据えて読解した作品。
ここで「アレゴリー」という語は、「別のものallosについて語るreuein」という語源を射程に含めつつ用いられている。つまり、「言葉は常にそれ自身とは別のものを指し示すことしかできない」ということだ。このことによって、言葉は常に発話者の支配圏から逃れ去り、非人間的・機械的なものとしてふるまうことになる。
こうした主張は確かに理解できるのだけど、たとえば「私の死」は私を消滅させるものであるがゆえに、「私」のものとは言えないのだけど、それでもやはり「私の死」であり続けるように、言葉もまたそうなのではないか、と思ってしまう。そうした地点を問題にできなければ、「言語の戯れ」といった悪い意味で表層的な議論にとどまってしまうと思った。
しかし、もちろん僕が読めていない恐れも大きいので、もう少しド・マンについては読んでいきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学
感想投稿日 : 2013年4月6日
読了日 : 2013年4月5日
本棚登録日 : 2013年4月6日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする