フシギ

  • KADOKAWA (2021年1月22日発売)
3.22
  • (11)
  • (46)
  • (100)
  • (16)
  • (6)
本棚登録 : 571
感想 : 68
2

真梨幸子「フシギ」。縁あって私もつい先程、いや、正に今現在、フシギな体験をしている。結果からお伝えするとその予期せぬ縁は、決して私をポジティブな気持ちにしてくれてはいない。
何があったかと文章に起こすと大したことでは無いのだが、事前情報無しで手に取った本書、著者真梨幸子の絶対的なイヤミス女王の肩書きに全体重を預け何も疑わず読み進めていたこの作品は
......ホラーだったのだ。
昨日読んだ芦沢央「火のないところに煙は」にて全身全霊でオカルトを体験した私は、しっかり楽しみながらも後遺症(主に水回り付近に近寄れない等の弊害)に悩まされていた。とりあえずほどほどに記憶を薄める為の努力を試みたその第一歩が、まさかの「オカルト被り」だった。フシギだなぁ。 最早好きなのではないだろうか 笑

そう言えば本書とは関係ないのだが、フシギな事にこの二作の前、令和発行の作品を三作連続で読んだ所、全てが大きな括りでネットを題材 主軸とするミステリーだった。フシギだなぁ、面白いなぁ。と、余裕かましてるのは連続でホラーを体験して見事成長した私をお披露目したいからではなく、ただ単にこのフシギ体験にお化けが登場しないからなだけだ。現金な奴なのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー

作家の「わたし」が語る一つのフシギ体験から様々なフシギが次々と重なるミルフィーユの様な構築。しかしあまり印象には残っていない。紛れもなくリレーを確実に繋げ、最後をアンカーに託す綺麗な構築にはなっているのだが、置いてけぼりにされている者が余りにも多過ぎる気がする。今回ばかりは著者の「登場人物の多さ」が仇となったのではないだろうか。
着地はミステリーらしく「真相」が待ち受けているものの見せ場では無いように感じる。その事実は驚愕はしても新たなる物語の繋がりは産み出さないだろう。とは言え、落ち着いて物語を整理すると全て「理論的」ではある。だが有耶無耶の多さは、築き上げたホラー要素を投げ捨てたくないからなのだろうか、、個人的には勿体なく感じてしまった。
置いてけぼりというより、説明不足というのが正しいのやもしれない。仕掛けと伏線が複雑過ぎて、正しい解釈を遠ざけている気がする。私の前置きのせいで更に分かりずらくなってしまったが、この作品は「オカルト」では無い。

不明瞭なオチはホラーの醍醐味だとは思うのだが、どうも恐怖心よりも釈然としない感情の方が強く表れた。例えるなら、しっかりミステリーとして読み込み、しっかりトリックに不服申立てている感じ。

新しいジャンルに踏み込んだ発展途上、通過点の作品なのだろうと信じたい。ホラーを追うのは本意ではないが、著者がこのジャンルで進化を遂げようとしているのなら、ファンとしてしっかり追うつもりだし、全力で葛藤した(※アピールポイント※)結果、腹は括っている。結果、ホラーでありオカルトでは無い事も背中を押してくれた。

た、楽しみだなぁ!震声

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本作家
感想投稿日 : 2022年3月23日
読了日 : 2022年3月23日
本棚登録日 : 2022年3月23日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする