曽我部恵一

アーティスト : 曽我部恵一 
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『夜を歌う曽我部恵一』

僕らは夜に深呼吸をしている。
そう気づかせてくれたのは曽我部恵一だった。

彼の楽曲にはモチーフとして夜が多く登場する。

夜明けや星、夜の風、窓の向こうの夜、眠れない夜、
孤独、誰かと繋がること、繋がらないこと。

それは僕らが絶えず見ていることだし、感じていることだ。

だけど、彼が言葉にして歌うことで僕らは初めて思い出す。

居酒屋で友人と酒を飲みながら大きな声で笑ったり、
部屋で本を読んだり、雨上がりの夜道を手をつないで歩いたり。

そんな夜のシーンでこそ僕は自分自身であったんじゃないかと。
昼に求められる「あるべき自分」から余分なものを脱ぎ捨て、自由だったじゃないかと。

昼になると魔法のように忘れてしまうこんなシンプルなことを
曽我部は思い出させてくれる。

今夜 電話で 愛しているって言えるかな
「テレフォン・ラブ(曽我部恵一)」

ライブで最高に盛り上がるこの曲で、
曽我部は愛しい人に伝えたいと思う気持ちを何度も何度も強調する。

夜でしか発せない言葉や感情。
夜がそれらすべてを飲み込む混沌だとして、
僕らはその中で輝いたり不安になったり満たされたりしている。
彼はそんな夜を本当に真正面から歌い続けている。

僕はいつも何も言い出せなくて
闇の中でその時を待っているんだ
「ミュージック!(STRAWBERRY)」

夕方の憂鬱にやられても 夜にはまた輝きだそう
「あたらしいうた(ラブレター)」

土曜の夜に僕は とってもいい気分さ
「土曜の夜(LOVE CITY)」

ビデオ屋の帰り道 夜の街キレイだった
偶然だれかに出逢うような気がして
ちょっとドキドキする
「キラキラ!(キラキラ!)」

彼の歌には夜の輝きや憂鬱や特別な時間がいっぱいにつまっていて、
昼に生きる僕らをふと立ち止まらせてくれる。

それが昼でも夜でも、僕たちはきっと遠泳での息継ぎのように、
夜の海で深呼吸をするのだ。

深く深く。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: music
感想投稿日 : 2010年5月1日
読了日 : 2010年5月1日
本棚登録日 : 2010年5月1日

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