ケースオフィサーとして長年CIAに従事し、その後起業家として成功を収めたピーター・アーネスト氏による、職業としてのスパイから学べるビジネス術の本。
スパイという文言から彷彿される映画の様な華やかな話は本書には出てこない。 秘密諜報組織の一番重要とされる技術つまり「情報に関する技術」と、それを収集する「個人」および「組織(チーム)」に焦点を当て、スパイ組織の考え方、戦略を解説している。
本書は12章から成り立っているが、これらの章では大きく3つに分類できる。
1) 工作員・協力者の採用・教育
2) 情報に関する技術
3) 組織運営
人員採用にあたっては書類選考、適性検査、面接などのプロセスを経るが、CIA自身が「人を引き付ける文化(Magnetic Culture)」を継承し続ける為、CIAの行動規範・ビジョンを共有できる資質を持つ人員を必要とする。 採用にあたってはや 誠実さ、やる気、ポジティブ気質、楽観的、協力的などを持ち合わせている他、仕事に対する責任感や合理的なリスクを取れる人間が必要とされる。
情報に関する技術。 CIAの仕事は、「情報収集 → 分析 → 情報伝達」 であり、その成果物は権力者の意思決定に役立つ「有用な情報(Interigence)」でなくてはならない。
情報収集においては、
・必要な情報を具体化し、誰がその情報を持っているのか、どこにあるのかを見出す。
・種々の手法で情報を引き出す際には対人力も必要となる。(ボディランゲージの観察や、相手の反応を受けての対処法など)
情報の分析方法では「単独型」と「ソクラテス型」がある。 前者は、有能な分析官が暗号や航空写真などの情報から情報を見出すもの。 後者はそれぞれ異なる意見を持った参加者・チーム間での質問と回答を通して分析を進めるもの。情報の切り口が多様になり、深い分析が可能となる。
情報の伝達。
主題を具体的に書き、主観を排除して事実のみを述べ、優先順位をつけて報告書を作成する。
また、報告する相手に合わせて構成や重きをおくポイントを変える。
本書に対する個人的な感想。
スパイが任務を果たすための手法・思考法はビジネスにも適用できるということは理解でき、要所要所に興味のある内容は有った。 しかしながら全体的には概念的な話+スパイエピソード、という形式でまとまりの悪い。 特に各章ごとにSummaryがあるのだが、本文で語られていない項目もあり、Summaryになっていない。 著者が言いたいことがSummaryに述べられている内容だとすれば、もう少し本文の方を推敲してほしいものだ。
- 感想投稿日 : 2012年3月21日
- 読了日 : 2012年3月21日
- 本棚登録日 : 2012年3月21日
みんなの感想をみる