スローペースな上巻と打って代わり、下巻に入って物語が一気に動き出すが、展開が二転三転する割に技巧性が感じられない筋書きで、終盤は勢い任せの力技で押し切った印象が強く残る。とりわけ、犯行の経緯を全て犯人の独白で済ませてしまうのはミステリーの謎解きとして安易過ぎやしないか。あとがきにて訳者が『様々な要素が作品を重層化させている』という私見を述べているが、その不純物の数々が物語のテンポ感や緊迫感を刮ぎ落としている様に思えて仕方ない。第37章での父子の会話は実に感動的だが、それ以外に惹かれる部分を見出せなかった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2021年4月13日
- 読了日 : 2021年4月11日
- 本棚登録日 : 2021年4月13日
みんなの感想をみる