辺境のオオカミ (岩波少年文庫 586)

  • 岩波書店 (2008年10月16日発売)
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本棚登録 : 158
感想 : 13
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ローマン・ブリテン四部作の〆。前三作は岩波”児童文庫”から出ている割には、内容が重厚で読み応えがあり「大人でも十分楽しめる」ものでしたが、本作は子どもはあまり楽しんで読めないんじゃないかと…

ローマ軍に所属する主人公アクイラと、ブリテンの一氏族の長であるクーノリクスは、様々な交流を通して友情を育むのですが、とある事件をきっかけに対立せざるを得なくなってしまいます。

ここで、例えば少年漫画やアニメであれば、アクイラとクーノリクスの友情を優先し、二人がローマ軍とブリテン氏族たちの衝突を止める為に奔走する、というストーリーになると思います。

しかし、本作では“大人の事情”によりやむなく(本人の意思に反して)戦わざるを得ない、という流れになっています。

そんな内容なので、むしろ社会人のほうがアクイラの立場や環境、感情を理解しやすいのではないかと思いますし、実際「分かる、分かるぞ〜、その辛さ」とカナリ共感しながら読んでいました。

これに関して、あとがきを読んでいて思ったのですが「ともしびをかかげて」が発表されたのは1959年。「辺境のオオカミ」発表は1980年のようで、ここから推察するに、昔ティーンだった頃に前三作を読んだことのある大人たちに向けて、サトクリフは本作を書いたんじゃないかなー、と。前作までにあった挿絵もなくなっていますし、より高い年齢層に向けて書かれたように思われてしかたないです。

個人的には、ローマン・ブリテン シリーズ“外伝”として、大人向けに出版してくれた方が良かったと思ってます。その方がより多くの人に、このシリーズを手に取ってもらえるチャンスが増えると思うのです。(自分で読む為の本を探しに、児童書コーナーに足を運ぶ人って少ないでしょうから。)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年5月14日
読了日 : 2012年5月14日
本棚登録日 : 2012年5月14日

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