獣の奏者 4完結編 (講談社文庫)

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本棚登録 : 3113
レビュー : 314
著者 :
inutoolsさん 上橋 菜穂子   読み終わった 

生命の営みの仕組みを、なぜそのようにあるのかを知りたい。理解したい。分かり合いたい。

そういう純粋な気持ちから見いだした王獣と対話する技術が、国の存続を左右するものになり、望みもしない国同士の争いに家族もろとも巻き込まれてしまったエリン。幸せになれるはずだったのに、またその頭の良さからいろんな新しい発見ができた可能性もあったのに、くだらない争いのためにそれらの可能性がすべてつぶされてしまったことが、本当に悲しい。

そして、獣とは分かり合えたのに、対話だけでは分かり合えない人間の頑迷さ。王獣と闘蛇の大軍をぶつけ合うことの危うさを過去に一度経験していながら、それから目を背けるように、ただ欲を手っ取り早く満たすために再びその武器を手に取ってしまった愚かさ。その武器が秘める、大いなる力を御しきれるものと思い込んでしまった傲慢さ。

ファンタジー世界を舞台にした物語ですが、そうした現実世界と変わらぬ人の汚い有様と、それが引き起こす悲劇を見せつけられました。読後は、エピックな世界観と文章から想像させられる風景•景観、幸せそうなエリン一家の姿、そしてなによりストーリーに満足しつつも、同時にまざまざと描かれた人という獣の醜さを心に焼き付けられたような感覚がありました。

2作目の王獣編も重厚感漂うお話でしたが、本作はそれを遥かに超える重みがあるように思います。良い作品ですが、すっきりしないという訳ではないけれど、何か心に引っかかって離れない、奇妙な感覚が残りました。

レビュー投稿日
2012年9月15日
読了日
2012年9月15日
本棚登録日
2012年9月15日
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