選書のために中学生から借りて読みました。

原作を読んだときの気持ちを鮮やかに思い出させてくれるコミカライズです。

本屋大賞受賞でかなり話題になった原作。あまり活字を得意としない子もこれなら読破出来た人がちらほら。
装丁だけとはいえ、原作にしっかりめにイラストがついちゃってるので、ある程度自分のなかでそれぞれのキャラクタービジュアルが出来上がっていましたが、それを裏切らない絵で嬉しいです。

ファンタジックなおとぎ話のようでありながら、逃れられない現実は原作同様、胸を締め付けるものがあります。むしろ、泣く、耐える、愕然とすると言った負の感情からくる微細な表情は、漫画である分、見ているのが苦しいくらいで………。

何よりオオカミさまがカワイイのなんのって!原作でもその可愛らしさは漏れ出てましたが、マンガは端々でさりげなくカワイイが爆発してます!

3巻まで借りたのでとりあえず一気読みです。

2021年3月8日

読書状況 読み終わった [2021年3月8日]

「息子は殺人犯か、被害者かー」
ただひたすらに内容の8割が、この帯のコピー通りの話です。

すごくキャッチーなテーマではあるし、このコピーに動かされたのは事実ですが………ん長い!

ある意味どっちも利己的な父と母。

殺人犯として家族を道連れに地獄を生きてゆくよりは被害者として死んでいてくれた方がいい。

息子はたとえ殺人を犯していようと、生きて自分の息子でいてくれさえすればいい。

主にこの2人の心の裡が、両極端な二択の未来を憂いてひたすらグラグラグラグラするのをこのボリュームで読み続けていると、共感とかドキドキを「長い!」が凌駕してしまった。
結局のところシュレディンガーの猫的なもので、決定されている事実を前に両方の可能性を弄り倒しているだけなんですよね。

途中でその名の通り一陣の涼風を吹かせてくれた涼介くん。彼だけが規士の本質を真っ直ぐに見ていたんだと思います。
でもきっと、それは親という生き物には無理なんでしょう。

そして我慢して読み進めれば進むほど、これほど焦らしといて、二択しかないように見える終着点にどんなすごい落とし所を用意しているのか……とギュンギュン上昇し続ける評価ハードル。そして内心、あんな遥か彼方のハードル超えられる選手いないよなーという諦観が降臨。

結果………がっつり落涙。
あれ?なんで!?って思うくらい心が揺さぶられました。
全く「どんでん返しぃ!」とか「予想外の結末ぅ!」とかないのに。
自分の感情が1番のミステリー。

解説を読んでなんとなく納得できたのは、あくまで究極に「リアル」だったのだと。
謎解きなんてしない。探偵の真似事もしない。真の黒幕とも戦わない。
ひたすらに望みのない二択の望みの間で、うっすらとした情報に踊らされながら、ただただ思い悩む。そして開示される確定していた事実。
読者然として読んでいたのに、半ば追体験の暗示にかかった状態で読んでいたような気すらしてしまうラストでした。

だからこそもう一回読みたいなんて絶対思わない。

2021年3月30日

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読書状況 読み終わった [2021年3月30日]

拭い去れない色眼鏡。
アイドルが書いたものなんてどうせ……とまではいかないものの、それに近い思いでずっと手を伸ばしていませんでしたが、お勧めしてくれた人に借りて読みました。
ハードルが地面スレスレだったとはいえ、少なくとも「アイドルが書いたもの」として予想していたような作品ではありませんでした。
拙さは感じられないし、おもしろかった。主人公の「実は」が明かされた時も、へぇー!ってなりました。

でも、ですね。でも、きっとばら撒かれていて自分が気付いてないであろうその伏線を見つけに、ページを戻るほどの引力は……なかったかな。

不倫相手や奥さん、マネージャーとのいざこざ。柊さん、アイドルグループのメンバーなどなど。キャラクターとしてそこそこしっかり書いた割に、大して動かない。もったいない。
かといってメインの2人がそれを気にさせないほどの厚みを持っているかっていうと、そうでもない。問題も解決も動機が全て希薄に感じる。
スクランブル交差点や、光の描写はすごく臨場感があって素敵なのに、最愛の人をスクランブル交差点で亡くした人間が、赤信号になった同じ場所で、新たに愛した人を立たせて写真を撮り続けるのかっていうのも疑問……。

手放しでの拍手喝采とは行かないけれど、チープなアイドル小説ではないと思う。
短編集、読んでみたいなーと思います。

2021年1月13日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2021年1月13日]

おはなしSDGsというシリーズで、17目標のうちのひとつめ「貧困をなくそう」を題材に描かれたストーリー。

父は失踪し、体を壊している母が介護のパートで小学6年生の陸と3年生の美波を養っています。
物語は陸が郵便受けから給食費滞納のお知らせを見つけるところから始まりました。つぶやくことばは「またかよ」。今日食べた給食が思い浮かび「ただ食い」という言葉が頭をよぎり、うしろめたくなる陸。
そこを皮切りに、払えない学童のお金、3年生になるのに絵本しか読めない妹、3日間変えないバスタブの水、少なく栄養の偏った晩御飯のおかずなどなど、小学生の子どもにはキツい現実が次々と明かされます。
買い物の帰りに、よその子どもがレストランで誕生日を祝ってもらうのを無言で見つめる妹。美波の誕生日はあさってなんです。最初、葛藤を抱える兄と違って、妹はまだ家庭の経済状況は理解していないのかなと思って読んでいましたが、こういう所からいろいろ感じ取っていることがわかります。それを察している陸は、予算の500円と努力で可能な限り豪華な晩御飯を用意します。喜ぶ美波ですが、せっかくのごちそうをほとんど食べることができません。原因は虫歯。歯医者に行くのにも治療費がかかる。日々晩御飯用の500円しかないのにどうするの?
という流れ。

挿絵が多めで、文体もストーリーもとても読みやすいため、暮らしの厳しさやつらい現実は理解しやすいと思います。
ただ、外国の貧困と飢餓にあえぐ子どもを見て「うちは貧乏じゃない」という妹に兄が抱く複雑な思い。「みんながアイスクリームをなめているのに自分だけ胃薬をなめている」ということばの持つ意味。挿絵と同じように挿入されているグラフから得られる情報。物語の希望であり、SDGsシリーズとしてのこの本のテーマ「貧困家庭を支えるための制度」。これらに関してはある程度の読解と共感と知識が必要かなと感じます。

2021年2月3日

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読書状況 読み終わった [2021年2月3日]
カテゴリ 選書
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本の虫な中学生女子に勧められて読みました。

うーん。金言の宝庫ですね。「新規フレーズ投稿」を何度タップしたことか。
初めて読む作家さんなので、どんな人か調べてみたら、塾の先生をされてた方なんですね。そして、めっちゃイイこと言いそうなお顔をされている!笑
ホームページもなんてオシャンティーなんだ!


なのに。読み終わるのに異常に時間がかかってしまったのはナゼダロウ。

自己啓発の要素が濃いからでしょうか。というかうっすらストーリーの味付けをした自己啓発本なんですね。そもそも自分の苦手分野でした。
ここまで金言の宝庫だと、中にある一つ一つの金の輝きが目立たなくなる、と感じてしまうんです。だから自己啓発本が向いてないんです。
自分の中の宝石箱キャパが極小であるが故ですね。

すっごくいい本である。それは大前提。

でも、毎日のように六本木駅の地獄階段をリクルートスーツ&ヒールで駆け上り駆け下りることができていた就活時代が遠く霞み、何もない平面でコケてしまえるように仕上がった今の自分には………。
彼の言を借りるなら「そんな理想論では現実は生きていけないよ」。これが近い。
あんな9通の返信が書けるようなピュアボーイは良からぬカルトの勧誘にも目をキラキラさせて引っかかっちゃうんじゃないかと心配にすらなってしまう始末。

手紙屋に言わせると、そんな私は本体が見えないくらい埃が積もってるんだろうなぁ〜。動いているとは気づけないくらいの速度では動き続けてはいるんだがなぁ〜。

でも、どうかこれらの無数の金言が刺さりますようにと著者が願っているのは、「今」自分の前に広がる道に目を向け始めた人たちなんですよね。

事実、私にこの本を進めてくれた中学生女子には、素敵なPOPを作成して他者に知って欲しいと思い、行動するくらいに刺さってますからね。

ただなぁ……対象者の多くは本が、文章が読めないんですが、どうしたらいいかですか。喜多川さん!!

2020年11月9日

読書状況 読み終わった [2020年12月2日]
カテゴリ 選書(中学)

お、芥川賞受賞作の毛色がいつもと違うぞ!と思って読み始めたら、やっぱりしっかりめの芥川賞でした。

自分に「推し」がいたことないもんだから、そのアツい想いが、より理解できない。
でも、所謂ファンとは一線を画す「推し」の引力は、明言されていない彼女の発達障害に由来するものがあるのでしょうね。

本筋とは違った見方だとは思いますが、おそらくLDの側面もあるであろう彼女を、ここまで突き動かす原動力に「推し」という存在がなること。それってちょっと希望というか。
「いろんなことが普通にできない自分」に諦めを持ってしまう人にとってそのエンジンって大きいですよね。
リアルな次元で考えれば、もちろんそれは揺るがないものであることが絶対条件なんですけどね。アイドルなんて絶対ナシで、なんなら生き物であってはいけない気もする。

いやいや、そんな話ではないんですよね。そうそう。
かといってこの本に関して語れることなんてそんなない。
あえていうなら、青の使い方上手いよねとか?カバーの肉色と本体の青、スピンの青。
ああいうのは、デザイナーさんの発想なんだろうか?それとも作者さんの意向?
そちらの方が興味深い。

2021年3月22日

読書状況 いま読んでる

新刊の内容紹介コメントを書くためだけに読み、読了後の印象は星3つでした。目をつぶれない荒さも所々……。

しかし、複数の中学生の感想を聞いていると、自分の読み解きとは全く違う考察が次々と出てくる。しかも、そのそれぞれの考察もまた、かなり印象が異なる。
そこではじめて、もしかして興味深い作品なのかもしれないと感じはじめて星ひとつプラス。

ウェブ上でもけっこう考察している人たちがいますが、やはり結論が綺麗に分散している気がします。

考察民が生まれる作品って、王道の結論(作品上の布石をノーマルに回収すると普通はこうなる、みたいな説)が生まれがちで、ちらほら「いやいや、そこまで穿った見方はちょっと…」とか「おい、私情と夢想が入りすぎだろ」っていう異端が散在する程度だと思うんです。

でも、この作品は王道がない…いや、王道の占める率が低い。もちろんツッコミどころ満載の異端もちらほら存在していますが、どの説もある程度「ほぅ…」ってなってしまう。

単純に明確なヒントが少ないっていうこともあるんですが、ある程度自分の説を説ける程度の濃度は残してくれているというか
……。その辺のさじ加減って難しいですからね。

ちなみに私は、あとがきの2者択一では後者を推します。ただ「愛」ではなく「興味」「固執」「執着」。
景を指し示し取り囲む、「愛」「恋」「尊敬」「崇拝」「敬慕」といった無数の矢印があって、彼はあくまでその中のひとつを握りしめているにすぎないのかと。
そして景からの矢印は唯一彼を指したから、彼はこの物語の語り手になれた。
でも、一般的に恋人となり得るのは、重さは違えどその矢印はある程度似た成分で構成されている必要がある。
彼女が携えているその矢印を構成する要素は、世間ではサイコパスと呼ばれるような種類の人にしかわからない成分で構成されていて、いじめの静かな煽動やスケープゴートの御膳立てもそこから派生するものなのだと考察します。
だとしても「特別」であったことは間違いないのではないでしょうか。

2020年8月5日

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読書状況 読み終わった [2020年8月6日]
カテゴリ 選書(中学)

今年の中学生向け読書感想文課題図書の中では中途半端な位置づけ(「天使のにもつ」は、面白そう!のリアクションが多く、「平和のバトン」は今までの学習の知識が土台にある)でしたがあえて推したい。

まず純粋にストーリーとしておもしろい。
子どもが理不尽に奪われた物を、限られた時間の中で取り戻す。しかもわらしべ長者方式を採択!スピード感があってキャッチー。
でもこの夏、この本は課題図書。「あー、おもしろかった♪」では終われない。掘っても掘りきれないくらいのゴリゴリに深いテーマを見て見ぬフリはできないのです。

わらしべならぬ、マンUキーホルダー長者サミはパシュトゥー人。アフガン難民です。この時点でこの本を読むことで何と向き合わなくてはいけないのかが明示されています。

恥ずかしいことに、中東の国と民族と宗教の複雑さを自分自身が把握しきれていないという根本的な問題が。
目線が中学生と同じくらいだと楽観的に考えて基本的なところから勉強し直してみました。が、当たり前のことながら原稿用紙数枚に収められるような話ではない。

読み、理解し、考え、文章で表現するという観点からいくと、土台の本質的な理解よりも(もちろんこの物語をきっかけに知ろうとする欲求は必要)今、紛争をバックグラウンドに持つ自分たちと同じ世代の子どもがどんな文化を持ち、どう生きてきて何を考えるのかを、知り、感じ、考えるのがこの本と向き合う課題なのかなと思いました。

解消の可能性を見出せないトラウマを抱えるサミが、「11番目の取引」と「贈り物」、そしてじじのことばから獲得した「喪失と出会いの本質」。
紛争と難民の問題と併せて頭と心でよーく揉み揉みしてほしいと思います。
それをさらに文章化しないといけないんだから、今年の短い夏休みはアツい夏になりますね。

あとがきもしっかり読んで欲しい。
ルバーブの音色もYouTubeあたりで聞いてみると、世界観の色が鮮やかになりますね。

2020年7月28日

読書状況 読み終わった [2020年7月28日]
カテゴリ 選書(中学)

初めての瀬尾まいこさんです。なので、あさのあつこさんによるあとがきで、他の作品の登場人物なのだと知りました。タイトルも表紙もわかるけど読んでなかった「あと少し、もう少し」。少しばかり時を戻すことになりますが、また大田くんに逢えるのなら読んでみよう。

この夏、若者が子どもの世話をする系の本をいくつか見ましたが、それらの中ではこの作品が「山も谷も無いランキング」1位です。でも「お気に入りランキング」も1位。

何か問題を抱えているわけでもない鈴香ちゃんと、安い言葉で言えば根がいい平凡な不良の大田くん(上等な脚を持ってるが、そこまでそれが活躍するわけではない)。
大した事件もなければ恋愛やいざこざもない。なのになんでこんなに読ませるんでしょうか。

読み終わってみればこのタイトルも実に秀逸。
正しく理解できているかは怪しいけど、すごくストンとくるタイトル。
君が僕を走らせる。君が僕の夏を走らせる。君がこの夏の僕を走らせる。君が君を愛おしく思う人の世界すべてを走らせる。「らせる」でゲシュタルト崩壊が起きちゃうくらい、子どもって生きものは刺激的で能動的。

いやしかし。大田くんもなかなかにこの短期間で鈴香ちゃんからどんだけ学ぶんだってくらい学びます。
オタオタしているようで、その実、かなり冷静な観察眼と判断力。そして実行力。かなり良い素地がなけりゃこんな仕上がりにならないぞと思っちゃいますが、子どもにはそこまでの魔力があるのだろうか。
おそらく彼の読み取りや学びは鈴香が我が子じゃないからこそ、のものも多分にあるのだろうなと思います。

読者には見えない未来に向かっていろんな要素が広がってゆくエンディングでした。
そのいくつかは、無数の可能性の中から現実的でやるせない分岐点を迎えることになるのかもしれないけど、振り返った時に走りはじめたこの夏が見えるのなら「ばんばれる」のだろうなあと思います。

2020年10月20日

読書状況 読み終わった [2020年11月3日]
カテゴリ 選書(中学)

私の中では馳星周さんは良き犬の本の人。
メインはノワールな世界観の人なんだと思いますが、あくまでバーニーズの人。
それが犬の本で直木賞だなんて。
もう肉眼で捉えられないくらいハードル上がってます。

「人という愚かな種のために、神が遣わした贈り物」もう帯の段階でグッときちゃってます。
人間本位な考え方ですが、古代より今日に至るまでパートナーであり続ける犬はまさに神からのギフトなんですよね。

本文にも帯コピーと似た一文がありますが、本当に犬好きにとってはわかりみ深すぎる描写が多すぎて首の上下運動と「くぅぅ〜!」が止まらないです。

短編だとばかり思っていたので、ひとつめの「男」パートで「えーーー!」ってなって「泥棒」で「あ、続くのね!」と安心しました。なんかこの段階でもう読み終わってしまうのが嫌になってる(早い)。

中盤ではむしろ多聞は死神なのではと……。「夫婦と犬」に関してはまだモヤモヤしてます。

タイトルの「少年」パートは終着点であることもあり、他とは段違いにストーリー性が高い。ずっと敷き続けてきた伏線もしっかり回収された…わけですが…。なんだろう。ちょっと神がかりすぎているというか。犬の記憶力に関しては十分あり得るとわかってる。でも目標の感知能力に関しては……もうちょっと現実的な理由付けが欲しかった気もします。

とはいえ、犬へのリスペクトはもちろん、それぞれのキャラクターの精緻かつリアルな描写、震災の恐怖やトラウマ。読みやすさも含め十分な良書でした。「男」の姉を皮切りに、「泥棒」や「娼婦」、「夫婦」に「老人」の周りの、彼らと多聞の絆を知る人たちから「少年」へと、多聞の軌跡が届けられる未来に読者みんなが想いを馳せられるでしょう。

日本中で、多聞と名付けられる犬が爆増すること間違いなしですね。

2020年9月25日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2020年9月20日]
カテゴリ 選書(中学)

読後すぐに誰かと、あーでもない!こーでもない!と盛り上がりたい衝動に駆られた一冊。

こんな設定が思いつくのはどんな人よ?と思って調べたら、これはノベライズなんですね。ということは脚本家の脳味噌がすごいのか。

御都合主義な流れも気にならないではない。でもこんなキテレツな設定に「現実的じゃない」とか「うまくいきすぎ」とか言うのは野暮な気もするので、手放しで面白かった!と褒めておく。

しかし瑞野さんと水曜日の件がペンディングのままラストがハッピーエンドっぽく納められていることにモヤモヤ。

これ、瑞野さんさえ事情を理解して納得できればうまく行くのかなー。
多分一ノ瀬はきっと誰よりも7人を独立した個として認識してそうだからイケそうな気がする。
でも瑞野さんは無理だなー。普通無理よねー。自分だったら無理よねー。
更に結婚ってなるとなー。日本じゃどっちかは愛人だしなー。

っとかって、グダグタ喋りたいので本の虫仲間におすすめしよう。
いやー、読後に人と盛り上がれる本ってやっぱり良作だと思います。

2020年8月26日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2020年8月26日]

バカリズムがエッセイでも出したのか。
書店の新刊平積みコーナーでポスターを見てそう思ったのは私だけではないのでは。
POPを見て、扁桃体に異常があって感情を理解できない男の子の話であることと同時に、どうやらバカリズムはノータッチであることを理解しました。しかも本屋大賞翻訳部門1位。

訳というフィルターを通している違和感が全くありません。
名前と生活文化の違いで、韓国を感じるものの、とても読みやすい。読みやすく、余計な修飾のないシンプルな描写だからこそあらゆることがダイレクトに響きます。
不味い冷麺を食べながら「生まれてくれてありがとう」と手をさすられて2人からの愛を注がれる光景。彼が何の感慨も抱いていないとしても。この後どうなるかがわかっているだけに刺さります。

しかし「感情がない」という状態を理解するのが難しい。
ユンジェの抱える問題を周りに悟られないようにしてきた母に、シム博士という存在がいたことを知って「母さんにそういう人がいて、本当に良かった。」と思う。この思いは、愛じゃないのかな?こんなポイントが何ヶ所かありますが、注釈や最後のシム博士の推測があることで肯定される要素なのでしょうか。
これをきっかけにアレキシサイミアについて調べてみたくなりました。
これまた本屋大賞の「流浪の月」では「性腺機能低下症」(明言はされてないですが)が未知の世界でした。本を読めば読むほど世の中は自分の知らないことだらけなのだと痛感しますね。

ユンジェがひたすらに「静」であるのに対して、ゴニとドラの「動」が鮮やかで、それぞれがシンプルな文体の中でより際立ちます。その異質が廃業に向かう古本屋で交錯する世界観もまた綺麗。不思議でどこか哀しく、若いが故のモラトリアムも感じる。

まだ、ここから。

どんなバックグラウンドを持っていても、今どんな状態でも、お互いがいたからこそ、まだ、ここから。

2020年7月6日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2020年7月6日]
カテゴリ 選書(中学)

ひとつひとつの風景、心理描写が綺麗。
だから、大きなテーマがあって歪で哀しいストーリーなのに、読後には「綺麗だったなあ」という不思議な満足感があります。

本を読むと得をするなぁと思うのが、プロによる、自分の感性を遥かに凌駕する描写で表現された映像を味わえること。

例えば、一般的ではないけど、どこか心地よく感じる男性の声を「半透明の氷砂糖みたいな声」などとは捉えられない。

うつらうつら寝ては起きてを繰り返して、部屋に広がった夕方の気配を「視界が透明なオレンジに染まっている。」なんて表現できない。

でも、凡人であるが故にそう表現できないだけであって、その表現が持つ世界観は想像できてしまうのが素敵。これも筆力ってやつなんでしょうか。


この物語の儚さはいろんな要素が構築しているものだと思うんですが、終盤で明かされる文の秘密に依るものが大きいと感じます。以下ネタバレです。


明言はされていませんが「性腺機能低下症」という括りに分類されるんでしょうか。「類宦官症」という別名もあるようですが、当事者の苦しみを思うと誰がつけた病名だよ、と憤りを感じますが。少し前に陸上界で話題になっていた性分化疾患とはまた別なのだろうか。現実にとてもセンシティブな問題なだけに、この機会に学ぼうとすることも大切だと改めて思います。

でも、もし文にこの中性感がなくて、暗い穴のような目をした男性ホルモン濃い目のガテン系だったとしたら物語の印象はがらっと違った色になっていた気がします。
まあ、そしたらお父さんと被らないから、そもそも更紗がついていかないのかな。

いや何が言いたいって、「普通」よりも複雑で多くの要素が構築するこの2人の、どの要素が欠けていてもこのエンディングにはならなかった。そう思うとやはり、これは奇跡であってハッピーエンドなんだと納得できる気がします。

2020年6月24日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2020年6月24日]
カテゴリ 選書(中学)

このタイトルはよく耳に目にしていたので、勝手に近代文学の類だと思っていたのですが、つい最近「え、米澤穂信なの!?」ってそこそこ驚き読んでみました。
うーん。クールな主人公。ではなく、これが厨二病ってやつかー高校生だけどー。という角度でしか主人公を見られず、いまいち楽しめない。なるほど、アニメにもなってるんですね。そこはなんかすごくしっくりくるコンテンツ。
シリーズ物だから、読み進めればキャラクターの味とか世界観に愛着をもてるのかなー。

でもなんだろう。「氷菓」というタイトルは好きです。それに関する謎解きも、持って回った表現でひたひたの思春期ワールドの中にあっては、ストレートで綺麗な着地だと感じました。
が、単純にこの薄い(物理的に)文庫本のタイトルに「氷菓」という2文字が素敵。字面も響きも。

2020年3月26日

読書状況 読み終わった [2020年3月26日]
カテゴリ 選書(中学)

短編ということもあり余計なストーリーは無しで、ひたすら謎解き!謎解き!謎解き!という印象。

時計屋がアリバイ崩しを商売にしているという突飛な設定は面白いですが、主観が謎を持ち込む刑事なもんだから、もう推理のわんこそばのようで。

もう少しそこをストーリーに反映させた奥行きが欲しかったです。
推理物をあまり読まないからかなあ。設定の割にちょっとがっかり。

2020年1月9日

読書状況 読み終わった [2020年1月9日]

表紙の明楽さんの美しいこと。でもクンはちょっとイメージと違うかなー。
そして相変わらずカワイイ狩犬たち。彼らの存在だけで読む価値がある。

4巻が出たのでやっと手をつけたものの、前巻までの内容が朧げなため、若干火狩りの世界で迷子。

明楽さんがみんなに愛されてて、灯子が若干モブで、煌四が我にかえり、てまりぃぃい!!ってなって、揺るる火ふわふわで、油百七が超絶本領発揮したお話。

自分の集中力の問題なのか、朧げな記憶のためか、神族と揺るる火のやりとりや戦闘シーンの描写で、誰が何言ってどう動いているのか混乱することが度々。

それぞれのパートが合流して、計画、企みもオールスタート。物語は佳境に入って山場だとは思うのに、個人的には1巻の灯子が三日月鎌を振るうシーンが未だにピークっていう。
ご都合主義がないぶん、救いらしい救い、希望らしい希望が翳りきってて、盛り上がってるのに盛り上がりにかけるという不思議な現象が。

トータル、3巻は我慢回でした。
次はとうとう最終巻。表紙灯子だし、きっとモブモブ感を脱出して最高のカタルシスをくれることでしょう。

2021年2月1日

読書状況 読み終わった [2021年2月1日]
カテゴリ 選書

中学生用選書。
うーん。訳の感じも含め自分の受持層には厳しいかも。

ホロコーストに関して読んだ、見た作品は多くありませんが、人間という生き物のいろんな可能性を強く感じたこの作品。
虐げる者と踏みにじられながらも抵抗する者、そして口を半開きにしてページをめくっている私。全部同じ人間っていうのが到底信じられないじゃないですか。

「全世界感涙のラブストーリー」なんていうチープな帯をよくもつけてくれたなぁとか毒を吐いたりもしたのですが、アウシュビッツという舞台において、そのチープコピーが持つパワーってとてつもないものだと思います。
アウシュビッツを語る上で、奪われる「愛」じゃなくて、育まれる男女の「愛」を語ることができるんだ!と。

また、こういっては語弊があるとわかりつつ言ってしまうと、想像していた地獄とは少し空気が違うと感じました。
もちろん劣悪な環境で、被収容者の人としての尊厳なんてクソとも思われていないのは十分伝わるんですが…日曜日は休みなんだ!とか、特権とはあえ1人部屋の可能性があるんだ!とか、見張り役がクズだけど憎み切れないぞ、とか。

でも、それがすごくリアルなんですよね。人間、地獄の中で馬車馬のように休みなく働かされ続けたら死ぬ。あっという間に労働力が無くなる。
そして、そんな中で普通にどんどん人が消えていく。煙に、灰になっていく。

フィクションとはいえノンフィクションに近いこのストーリーの主人公ラリ。生き抜くことが最大の抵抗だと信じ才能と学と愛と運をフル稼働させられる判断力と精神力。そして確かにイケメン。

自分だったらって考えると、退場ポイントの多さに辟易します。貨物車の時点でドボンですね。
ソ連のポン引きやってる時なんて、最後にお偉いさんの仕事だけ片付けて逃げよう。いや、お手当もらえるって言うし、屋敷が引き払われるまではのんびりやるか。とか言いかねない。
速攻で自転車にまたがるラリだから生き延びられたのでしょう。

引きの強いPOPを作るから、あとがきと息子の言葉も含めて、なんとか読んでもらいたいなあ。

2020年1月27日

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読書状況 読み終わった [2020年1月27日]
カテゴリ 選書(中学)

訳による独特なクセのある言い回しとか、笑いどころの元ネタがわからないもどかしさとか、いろいろと読みづらい要素はあるのですが、その辺を考慮したとしてもおもしろい!

品のある笑いなんて、なりふり構わない下ネタの足元にも及ばない、という貧民センスの自分ですらニヤニヤしながら読んでしまいました。特に真っ赤なカマーバンドや紫の靴下や青いスパッツのくだりがシンプルで最高。
許しがたいファッションセンスによる奇抜なアイテムを駆逐する為にキレキレの頭を駆使するジーヴス。毎度、華麗なまでにしてやられるバーティー。大好き。「お洒落なエレベーター・ボーイ」なんて、なんとお洒落な着地でしょう。

とはいえ、強めのクセのせいでシリーズ一気読み!は難しそうなので、「二、三冊待機」させながらのんびり読んでいきたいと思います。

2020年2月26日

読書状況 読み終わった [2020年2月26日]

十二国記フリークかつ、ホラー好きとしては昔から気になっていた本でしたが、個人的に「残穢」がハマらなかったので今日まで開くに至れず。

結果、「残穢」よりは楽しめました。
怖さの種類としては、あくまで小野不由美ホラー特有の冷たい湿度とリアルさが効いていて「残穢」と同じ方向性です。

何が違うかと考えると、物語感が「残穢」より濃いんですかね。
「残穢」はほぼノンフィクションのようなものだと考えると当たり前なんですが、やっぱり私は小野不由美の紡ぐストーリーが好きなんだなあと。縦軸の尾端さんの存在も大きい。そしてフィクションホラーだからこそ、怪異の根っこには哀しみがあるってことがはっきり描けるのも娯楽読書には欲しい要素。

十二国記フィルターを度外視しても、「魔性の子」レベルの小野不由美ファンタジーと小野不由美ホラーが個人的にはベストです。

2019年11月12日

読書状況 読み終わった [2019年11月12日]

わかりやすく、バラエティに富んだホラー短編集。
短編だし、がっつり爪痕を残すような重厚さはないですが、あっさり、さっぱり怖くて良いです。

中学生の選書候補でしたが、怖さの程度はちょうどいいのにちょっとしたグロ描写が入るのが気になる。でも、リクエストに挙がっている本の内容を確かめてギョッとすることも少なくない近年、最近の中高生はこの程度なんでもないでしょうね。

他にもっとわかりやすく怖い話がいくつもあったのに、1番頭にこびりついているのは「二股の道にいる」。なんだろうあの嫌な感じ。嫌な感じなのに嫌いじゃない。多分、この本のタイトル、作者を忘れても、この話だけはいつまでも覚えていそう。

2020年3月18日

読書状況 読み終わった [2020年3月18日]

文句なしに面白かったし、澪ちゃんと一緒に何度涙腺が緩んだことか。

かなり前から、名作だということでタイトルは知っていましたが、時代物が苦手な私に「これなら絶対ハマれるから」と本の虫にオススメされてやっと手に取りました。

時代物の何が苦手って、道具だったり衣類だったり、建物や時節、髪型に至るまで、読み方すらおぼろげな名称の物がけっこう出てくること。まず読み方が気になり、何にどうやって使う物なのか気になり、全部調べていたらストーリーが一向に進まない。なんとなくでスルーすればいいんだろうけど気になる。
もちろんこの本にも色々出てはくるんですが、比較的易しい。さらにストーリーが面白く、単語の前後の文章で自然と絵が思い浮かぶのでスルーしやすい。また、美味しいものの描写って時代を超えるのかなとも思います。

澪ちゃんの才能と両立する素直さ、実直さ。周りの人たちの人情。いいですね。たとえネタはバレてても、泣かせるところできっちり泣かせてくれる筆力。シリーズ全て読みたいと思います。

来年には映画化もされるそうで、キャストを見るとドラマキャストよりも自分のイメージにはしっくりくるので、そっちも楽しみにしたいと思います。

2019年10月17日

読書状況 読み終わった

うーん。中途半端。
子どもたちに人気の5分シリーズをノベーっと引き伸ばした感じ。その割に、壮大な物語を繰り広げた上での、「真相は読者の中にあるのです」的エンディングがチグハグな気が。オチと主観の所在で考えれば、答えは出しているとしたものなのか?「マジックアウト」とか「一〇五度」とか面白かったのになー。

完全な夢物語ではない気にさせる近未来感と危機感が、テーマとしてはありだと思います。とてもキャッチー。
平たく簡素な読み心地も、本が好きとは言い難い子どもたちにはちょうどいいのかもしれません。
でも、この本を「面白いー!」って感じた子の中に「アイザック・アシモフって誰なんだろう?」「ロボット工学の三原則って何!?」って考えて調べる行為に発展する子がいる確率は低い気がする。むしろ、物足りないなって感じた子の中に発展読書ができる可能性を感じます。

つい考え込んでしまいました。
読解力の低い子や、読むという行為自体が苦痛な子は、上橋菜穂子とか小野不由美作品のような奥行きのある世界観の物語を楽しめません。
ならば、5分シリーズ(星新一のような完成されたショートショートとは区別して捉えたい内容の薄いもの)や、「読みやすい」ことのみに特化したものでも、とにかく「読む」行為を積み重ねることが大事なのか。
全く読まないよりはいいのかもしれません。中には段階的に上質な読書へ移行していける子もいるかも。
でも、行間を読む、とか、自分の中にない魅力的な表現を吸収する、とか、文章から匂いや色を感じる、とかいう力がつくことはあまり期待できない気がします。
感性の成長を促す本っていうのは、やっぱりある程度限定されるんじゃないかなあ。 

2019年12月12日

読書状況 読み終わった [2019年12月12日]
カテゴリ 選書

何かの児童書紹介冊子で知って、ブクログ登録していた本。
カバーデザインとタイトルが素敵です。
煌く夜の祭り。
それは記憶や希望、経験、知識、夢、想いの伝承と継承なんですね。

魔物が人を喰い、戦争によって血がたくさん流れるんですが、グロさとか血生臭さとかではないんですよ。流れる血を構成するのはは哀しさと愛。

ペンとメモは必須ですね。ページを前後しながら読んだものの、メモに頼らず記憶に頼って読み切ったもので、とりこぼした感動がありそう。いずれ再読を!

2019年10月24日

ネタバレ
読書状況 読み終わった

ダウン症の兄について書かれた、イラストエッセイです。
表紙のヒロさんの頭から1本花が生えている(中のイラストにも時折生えている)んですが、なんだかそれが、すごく「そうっ!それ!」って。ダウン症の人をとても端的に表現している気がする。

実際のところ、ダウン症に限らず、なんらかの障害を持った人を抱える家族というのは想像も及ばない葛藤や苦労があるんだと思うんですが、この本はそこへの理解を強要するものでは全くない。
おもしろいんです。ダウン症の方と触れ合う機会のある人なら、「あるある!」って笑えてしまう読みもの。そして、「ああ、あれはそういうことなのかもしれない」という気づきもくれます。家族だからこその理解のもとに描かれるヒロさんの言動、日常にほっこり。

しかし、どうしても経験上いろいろと考えさせられる。

「きょうだい児」という言葉があります。
この言葉自体が嫌いだ、差別だという人もいますが、あえていうなら、作者の佐藤さんは元きょうだい児といえます。

両親の大変さは心身共に相当なものだとは思いますが、きょうだい児の心の裡というのは本当に複雑なものがあると思います。佐藤さんのもうひとりのお兄さんのようにすんなりとヒロさんの存在を受け入れることができるのはきょうだい児全体の何割なんだろう。

この本を読んでいると、障害を持つ妹(彼女もダウン症でした)のことを思春期あたりから受け入れられなくなり、そのままあらゆることを拒絶してドロップアウトしてしまった男の子を思い出しました。こうしてヒロさんをテーマに、ほんわかした愛を感じる暖かい一冊を仕上げるまでにどんな葛藤があったんだろうか。作品の中で少しその辺にも触れていますが、ほんとにさらっと書かれています。

大体のことがそうであるように、当事者にしかわからないものだし、家庭、個人でも全然違う。いろいろ考えたって余計なお世話だろうけど、日常で触れ合う第三者の理解と対応で、少し何かが違ってくるんじゃないだろうかとも思います。

2019年11月25日

ネタバレ
読書状況 読み終わった
カテゴリ 選書(中学)
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