Never Let Me Go (Vintage International)

著者 :
  • Vintage (2006年1月1日発売)
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本棚登録 : 130
感想 : 17
4

<この本を原書で読む方へ>
冒頭や前半でよく理解できないことがたくさん出てきますが、それは英語力の問題ではありません。徐々に明らかにされますのでご心配なく。

<ネタバレするかも。要注意>
読み終わった後にどんよりとした気持ちにさせられた小説でした。
いろいろな人が絶賛していたので、勝手に「心温まる物語」だと思っていた私も悪いのですが、こんなに読後感が悪いと他の人には薦められません。でも、よくできた小説だと思いますが。

ポイントとなることをいくつか。

1.RuthとTommyの人間性が一番私たちの倫理に近いところにある。deferralが二人に適用されることを望んだRuthと、それを裏切られたときに感情を爆発させるTommyと。それに対して、Kathはそれほど強く望まないし、それが叶わなかったときにも失望を見せない。TommyにはKathに対する愛情が感じられるが、Kathは「愛」を知っていたのか、それも疑問。

2.Hailshamの創設者の上から目線は本当に嫌い。まあ、たまにこういう人たちいるよね。他人を助けるふりをして、単なる自己満足で終わっているタイプが。「違うだろ!」と何度思ったことか。でも、小説の中の人たちは誰一人「違うだろ!」と言わない。

3.この物語が淡々としているのは、おそらくKathの感情が乏しいからだと思う。諦めているというわけではなく、最初から感情がないのだと思う。次から次へとdonarを送り出してもあまり疲弊していないようだし、RuthやTommyとの別れに対しても、それほどの感情がない。(まったくないわけではないが、きわめて薄い) 一度も泣いたことがないのではないかと思っていたけど、最後の最後で涙を流す。それが彼女にとって一番の感情表現に思える。こんな彼女だから、carerとして一流なのだと思うけど・・・。

4.ラストのシーンがこれまたすごい。英語力が微妙なのでちょっとイメージが違うかもしれないけれど、これまで築きあげてきたと思っていた人生が実は何でもなかったという無力感。ごみ、塵?平家物語の「諸行無常」を思い出させるあたりは、やはり日本人作家だからか。

不思議な倫理観をもった人たちの下で育った子供たちの心情をここまで丁寧に描くのはすごいと思うけど、とにかく読後感が悪すぎ。
物語の後半あたりからずーーっと落ち込んでいて、読み終わってさらに落ち込んだ・・・。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 洋書(文学)
感想投稿日 : 2010年9月21日
読了日 : 2010年9月20日
本棚登録日 : 2010年9月21日

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