橋のない川(二) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1981年3月27日発売)
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感想 : 21
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浦野所有。

昼間は普通の人間と変わらずに温かな手足が、夜になれば蛇(くつな)のように冷たくなる――。

そんな俗信を信じてしまう杉本まちえの悲しさ。そしてその真意を知った貞夫と孝二のむなしさ。『橋のない川』第二部はそれにつきます。少しずつ孝二への態度を硬化していく柏木先生も悲しかったです。

それから第二部では作中、孝二が誠太郎と島崎藤村著『破戒』について語り合うシーンが印象深かったです。のちに孝二は従兄弟ともこれについて議論するのですが、恥ずかしいことに、このときの私は『破戒』を読んでいなかったので、孝二や誠太郎や、健一、和一、七重らと一緒になって話し合うことはできませんでした。『破戒』を読んだいま、もう一度、このくだりだけでも読み直さなくてはいけませんね。

また孝二と貞夫が、石川啄木の『一握の砂』についてやり取りする場面もありました。啄木にならって自分たちの心情を即興で詠んでしまうとは、2人ともとても豊かな心の持ち主なんですね。私も『一握の砂』を読んでおかなくてはなりませんね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(作者名さ行)
感想投稿日 : 2010年5月6日
読了日 : 2010年5月6日
本棚登録日 : 2010年5月6日

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