「歌丸極上人生」
笑点の司会を引退した桂歌丸の噺家人生を本人が語った本である。
平成18年に「極上 歌丸ばなし」と言う単行本に加筆訂正して文庫本となった。
歌丸が横浜・真金町の富士楼という女郎屋で育ったそうで、当時の様子がよく書かれていてなかなか面白かった。戦中・戦後はあまり生活に困らなかった様子だが、それも遊郭にいたからこそである。おばあさんが相当のやり手だったようだ。
戦後噺家になってからの話はいろいろあるが、落語界の誰それと言っても名前は聞いたことはあるものの、どんな人かよくわからないのでピンとこない。それでも当時の落語界の雰囲気はなんとなくわかる。
歌丸は、はじめは新作落語の師匠に弟子入りしたものの、次第に古典落語を演じるようになり、古いあまり演じられていない噺を掘り起こしていろいろと賞を受賞している。
新作落語は新しいものを作るのがたいへんであり、基本は古典落語であるのでそちらに傾倒していったと言うことである。しかし、古典と言っても、今では話しが残酷だったり、昔の習慣とは違ってわからなくなっているところがあるので、現代でもわかるように作り替えて演じている。
落語家は後輩の落語家を育てると共に、お客を作り育てていかなければならないという。その考えは芸を磨く執念のようにも感じられる。
落語は江戸時代から続いており、ビデオやCDになっているので聞いてみるのも面白そうだと思わせる一冊である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
その他
- 感想投稿日 : 2016年7月31日
- 読了日 : 2016年6月29日
- 本棚登録日 : 2016年6月29日
みんなの感想をみる