涯 (百年文庫 22)

  • ポプラ社 (2015年1月2日発売)
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感想 : 16
3

「異父兄弟」
ちゃんと後悔するんだ?
あんなにのけ者にして、怒りの矛先にして、感情のゴミ捨て場みたいにした義理の息子に対して?
それは、死んだから?
死んだから、関係なくなったから、優しく思える?
その、死に際の献身的な、天使のような姿に心を打たれた?
読み方によっては、とてもいいお話だと思う。
そして、読み方によっては、とてつもなく身勝手で、都合よくって、女々しい話だ。
後悔なんかするなよ。と、私は思う。
後悔するような人間かよ?善人ぶるなよ。と。
赦される、なんて思うな。
と、なんか、イライラした。

「流刑地」
狭く閉じられた田舎で労働を課せられた男たち。
女を自分のもののように囲う男やほしいままにする男の姿がある一方、女に裏切られ心を狂わす男もいる。
全てが「刑」であるような場所と時間だ。
しかし、読みにくい上に、テーマもそんなに面白くない。
私は好きではない。

「碑」
三兄弟の生き方は、三者三様のようで、根底は同じだと感じた。
比較的淡々とした文章で描かれていたが、筆者が次男に心を寄せていることは、作品の奥からにじみ出ていた。
そのことは「碑」というタイトルや、書き出しなどにも表されている。
愚直で強い半面稚拙で弱くもある、厳しくて温かい心の持ち主は、やはり人として魅力的なのだと思う。
しかし、江戸から明治に移行した際の、武士の苦難はいかほどだったろうか。
プライドや身分を捨てて、新しい価値観を受け入れてなじみ、身をふっていく、なんて、そうやすやすとできたものではないだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 9・文学
感想投稿日 : 2019年5月3日
読了日 : 2019年5月5日
本棚登録日 : 2019年4月27日

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