(079)隣 (百年文庫)

  • ポプラ社 (2011年6月10日発売)
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本棚登録 : 32
感想 : 6
4

「駄菓子屋」
貧しいということの苦しさや、お婆さんのこわばってしまった心が切ない。
もう、新しいことを目指せるほどの柔軟さも資金もない。
自分と他者とを比較して、独り煩悶を重ねる。
ましてや、隣に自分よりも新しく優れた同業者がいるとなると、なおさらであろう。
息子が学校を出たら。
その、小さな光を支えに思うお婆さんの姿をいじらしく思った。

「判任官の子」
出だしから笑いがとまらなかった。
実に子供らしい。
少し頼りないけれど人のいいゆたかの姿がほほえましかったり、切なかったり。
それぞれの家の空気の違いも伝わってくる。
最後の出来事の顛末も、悲しい。
嘘をついてしまった加代ちゃんの気持ちも、渡のしたことも、先生に信じてもらえず濡れ衣を着せられたゆたかの震える心も。
ひび割れが広がっている子どもたちの関係が修復されることを願いたい気持ちになった。

「三月の第四日曜」
まだ幼さの残る弟を迎えにいくサイ。
サイは、都会の生活になじみつつも、そのずるさや厳しさ、ままならなさも味わっている。
弟を想えども、励ますことすらできない。
最後の弟の声は、読む者の不安を掻き立てる。
厳しい現実だ。
田舎から働きに出てきた者の辛さと寂しさを感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 9・文学
感想投稿日 : 2021年1月12日
読了日 : 2021年1月14日
本棚登録日 : 2021年1月8日

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