新書アフリカ史 (講談社現代新書)

制作 : 宮本正興  松田素二 
  • 講談社 (1997年7月18日発売)
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感想 : 31
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人類発祥の地、そんな暁光とは裏腹に、停滞と閉鎖的な、暗黒の印象つきまとうアフリカ。特に、永く世界史から捨て置かれたサハラ以南はそうだ。しかし、これまでの欧米中心な進歩史観が見直されるとき、そのサハラ以南にも、有史以前より幾多の文化文明が明滅し、多彩な民族、王国が栄枯盛衰する。サハラは、文明と未開とを分つ砂漠ではなく、むしろ文化が交流し、対流する砂の海であった。そう、かつてのアフリカを覆った強靭で広範な商業ネットワークは、欧州中東アジアと対等以上に渡り合っていたのである。そして、そんなアフリカが、欧州の近代化を前にして、次第にその自律性を失っていく。それは、(必ずしも一方的なものではないにせよ)アフリカの分断に他ならなかった。今日、「トライブ(部族)」と呼ばれている集団は、実は植民地化の下で、政府が小集団を集めて作り上げたものであったり、他集団との競争で「トライブ」としてのアイデンティティが芽生えた集団であって、紛れもない(想像の共同体としての)近代化の産物である。そもそも、今に伝わるアフリカの際立った身体的、言語的多様性は、個々の孤立によるものではなく、きわめて活発な接触と交流、不断の混血と移住によるところが大きい。はたして、そのダイナミズムを失い疲弊していくアフリカに、人類の英知は何をもたらすことができるのか。アフリカは停滞遅れているというよりは、もっとも先んじて、近代化と民主主義の矛盾に葛藤しているともいえるのかも知れない。最良の手引書の一。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年7月19日
読了日 : 2013年7月13日
本棚登録日 : 2013年7月15日

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