どんな世の中でも旅に出たい!旅心をくすぐるエッセイ25編。ANA機内誌連載をまとめたベストセラー作家の素顔が垣間見える第4弾。
コロナ禍の今日、ちょっとした外出だけでも躊躇するようになった。ましてや旅行となると…。著者のあとがきにあるとおり、"まさか"の連続で気が滅入る日々だが、一服の清涼剤のような本作がやさぐれた心を癒してくれた。

2021年2月24日

読書状況 読み終わった [2021年2月24日]

コンプレックスまみれの中3男子がひと夏の経験で得たものは?性欲に支配される思春期を描く青春小説。
思春期の男子の性欲ったら、もう自分で嫌になるくらい有り余っている。酷い時には、目に映る全てのモノに"性"を感じる異常さだ。いつも大人の感情をクールに描き出す奥田さんなので、その辺どう表現するのか期待した。ちょっと物足りないが、現代の草食男子ってこんな感じなのか。

2021年2月24日

読書状況 読み終わった [2021年2月24日]

死体遺棄事件の捜査線上に浮かび上がる二人の天才棋士。誰が誰を、何故殺したのか。物語は衝撃の結末を迎える。魂を震わせる慟哭のミステリー。
天才を理解できるのは天才だけ。映画『聖の青春』でも、村山と羽生の深夜食堂会談は常人には理解できない奥深さがあった。名画は不幸を呼ぶ曰くがあるが、名匠の駒も同じなのかもしれない。たくさんの天才が流した涙が曰くを呼ぶのか。

2021年2月17日

読書状況 読み終わった [2021年2月17日]

平成六年の夏、埼玉県の山中でされた身元不明の白骨死体。遺留品は名匠の将棋の駒。二人の刑事が駒の足取りを辿るなか、将棋界では世紀のタイトル戦が始まろうとしていた。重厚な人間ドラマを描いた傑作ミステリー。
柚月裕子版『砂の器』。貧しい家庭環境に置かれた少年の壮絶な生い立ちや泥臭く真実を追い求める刑事の姿など、昭和の名作ミステリーを感じる構成がうれしい。そして何より、殺された人物は誰なのか、そして将棋の駒が伝えるメッセージは何なのか。ページをめくる手が止まらない。

2021年2月17日

読書状況 読み終わった [2021年2月17日]

大人の都合に振り回され、血の繋がらない親の間をリレーされながらも出会う家族皆に愛情をいっぱい注がれてきた優子が伴侶を持つとき…。幸福な読後感がやってくる本屋大賞受賞作。
家族というのは、血の繋がりで幸せが決まるわけではない。思いやる気持ちが互いにあれば、どんなに困難が訪れても絆が壊れることはない。

2021年2月8日

読書状況 読み終わった [2021年2月8日]

もと武士らしき男が営む『権兵衛酒屋』。その女房が斬られ、亭主は現場から姿を消す。謎を探る鬼平に兇刃が迫る。
ちょっとしたきっかけや何気ない出来事の記憶が、大事を未然に防ぐことができる。鬼平の大胆な推理と決断が、庶民の安寧を守った。登場人物も渋目のキャスティングで、大事件だけど落ち着いた雰囲気。

2021年2月8日

読書状況 読み終わった [2021年2月8日]

"見守り屋"の犬森祥子、夜勤明けの美味しい料理と酒に癒される…。疲れた心にじーんと沁みる、珠玉の人間ドラマ×絶品グルメ小説。
美味しい料理を食することは、人生に満足感を与える。悲しいこと辛いことに遭っても、旨い料理と酒があれば明日をきちんと迎えられる。それにしても、祥子の店選びにハズレがないのが羨ましい。

2021年1月30日

読書状況 読み終わった [2021年1月30日]

大政奉還を目前に控え、徳川慶喜暗殺未遂事件が起こった。幕閣から犯人探索の密命を受けた坂本龍馬と土方歳三は、衝突しながらも真相を探る。幕末維新のオールキャストでおくる傑作エンタテインメント長編。
相反する立場の二人が、日本の未来の為に手を結ぶ。会話のやり取りも面白いが、登場する歴史上人物の豪華さに心が踊らずにいられない。現代において平和な時間を過ごせるのも、この時代の人々が日本の夜明けを現実に起こしたからであろう。生涯ベスト級の名作である。

2021年1月30日

読書状況 読み終わった [2021年1月30日]

同窓会で語られるのは、思い出と犯罪計画…。かつての体罰教師への仕返しを実行した洋輔ら四人だったが、思わぬ殺人事件に巻き込まれる。衝撃のラストに二度騙される長編ミステリー。
謎がなぞを呼び、主人公が人間不信に陥っていく過程がよかったが、結末と動機にとても違和感がある。"兄えもん"の登場時点でがっかりしてしまった。

2021年1月21日

読書状況 読み終わった [2021年1月21日]

兄の死以来、人が死ぬ小説ばかりを読んで過ごす少年。彼の前に現れた天真爛漫な少女の影響を受け、少年の時間が動き始める。泣いて笑って温かい、優しい恋の物語。
"神様は乗り越えられる試練しか与えない"って言葉がとてもいい。人生なんて9割は辛いことの連続だ。でもだからこそ、残りの1割の楽しいことに人生の価値を見出だすことが出来る。

2021年1月21日

読書状況 読み終わった [2021年1月21日]

多彩な口笛で赤ん坊にだけ愛されたおばさん…、表題作をはじめ、偏愛と孤独を友とし生きる人々に訪れるささやかな奇跡を描く全8編。
偏愛は純粋なのか狂気なのか。周囲の環境や存在する時代でその評価は変わってくるように思う。己を突き通すのか他人に合わすのか、偏屈とお調子者の根本的な差は僅かでしかない。

2021年1月11日

読書状況 読み終わった [2021年1月11日]

水道事業民営化の利権に群がる政治家や企業。ダムの爆破テロ事件の真相を巡って、秘密組織エージェントの鷹野一彦と田岡亮一が奔走する。シリーズ三部作完結作。
前二作と比較すると、スケールが大きい分ストーリーが雑になってしまった感じがする。全てがAN通信の都合の良い展開に思われて仕方ない。

2021年1月7日

読書状況 読み終わった [2021年1月7日]

自身も一発屋芸人と呼ばれた著者が、12組の一発屋芸人に取材。不器用ながら一歩ずつ前に進むそれぞれの今に迫る。笑いあり涙ありの人生ノンフィクション。
芸人同士、そして一発屋同士だからこそ分かる栄光と挫折の真実。著者の文体が、茶化しながらも愛情に溢れていて好感が持てる。以前、音楽プロデューサーの「一発屋を馬鹿にするけど、その一発を当てるのが大変なんだよ」って言葉を思い出した。

2021年1月7日

読書状況 読み終わった [2021年1月7日]

日本を震撼させた凶悪事件の犯人はその瞬間、何を見ていたのか?心の奥底に眠る狂った快楽とは?逮捕直前、獄中面会、裁判傍聴。辣腕記者による執念のルポルタージュ集。
はっきり言って"人でなし"である。自分だけの理屈や周囲・環境の責任、挙げ句には異次元の存在さえ持ち出す。そしていちばん大事な、被害者やその家族に対する真摯な謝罪がないことに人としての存在意義がないと思ってしまう。

2020年12月31日

読書状況 読み終わった [2020年12月31日]

ふとした瞬間に甦るあの時の出来事や言葉や風景。誰もが経験する"記憶のかなた"を、短編の名手・角田光代が奏でる。意外なストーリー展開が生み出す熟練の短編8篇。
果たしてあの時の記憶は、正しい記憶なのか。勝手に結論付けているけど、もうひとつの真実があったのではと思うことがよくある。本作に収録のストーリーも、遠い記憶のなかでほろ苦さを噛みしめる作品群である。

2020年12月31日

読書状況 読み終わった [2020年12月31日]

全世界で聴かれているNHK WORLDーJAPANのラジオ番組で、17の言語に翻訳して朗読された作品のなかから、人気作家8名の短編を収録。
最近はすっかりラジオとはご無沙汰だが、今回をきっかけに改めて『聴く』ということにチャレンジしたくなる。流石に短編の名手揃いなので、作品も上質ばかりである。お気に入りは、角田光代『鍋セット』と東直子『マッサージ』。

2020年12月17日

読書状況 読み終わった [2020年12月17日]

東京葛飾区で起きた女子大生殺人事件の容疑者は、既に別事件で逮捕されていた。事件の背後に何があるのか。そして二十年前の少女失踪事件との関わりは?全てが結びついたとき、姫川玲子は幾重にも隠蔽された驚くべき真相に気づく。
常識と定石に囚われては解決できない真相がある。これは姫川とガンテツじゃなきゃ無理だし、やっぱりこの二人の根っこは一緒だと思った。何故、ガンテツはガンテツになってしまったのかが分かるエピソードが面白い。そして、姫川は竹内結子さんのものと改めて思い知る。ご冥福をお祈りします。

2020年12月17日

読書状況 読み終わった [2020年12月17日]

日曜日のクリスマス・イブの日、郊外のシネコンで働く人たち。それぞれが微妙な人間関係のなか、複雑な悩みを抱えながらもひたむきに仕事をしている…。映画館の各部署で働く人の想いが重なりあう心温まる連作短編集。
映画館を舞台にした小説や映画は数多くあるが、シネコンが舞台の作品は初めてかも。物語の世界で映画館のイメージは郷愁とかノスタルジーになるが、シネコンではちょっと違う。それでも主役は人間となれば、その部分は欠かすことができない。作者の挑戦に拍手を送りたい。

2020年12月8日

読書状況 読み終わった [2020年12月8日]

突然、普通の人々に訪れる日常生活の歪み。平凡な家庭に潜む秘密を鮮やかに浮かび上がらせる五篇のミステリー。日本推理作家協会賞短編部門受賞後第一作。
作品内に漂う雰囲気が、ただただ異質さを感じる。いつもの日常と変わらないはずなのに、何故か違和感を覚えるほど気持ち悪いものはない。この表現力は現代作家随一かもしれない。

2020年12月8日

読書状況 読み終わった [2020年12月3日]

球界のトラブルシューター"ゼニバ"こと代理人・善場圭一が窮地に陥ったクライアントを救う。野球界の裏情報も楽しめる異色のスポーツミステリー。
プロ野球選手の旬は短い。だからこそ活躍に見合った報酬は得るべきだが、日本人はやっぱり謙虚さが美徳とされる。善場の凄いところは、金銭絡みの悪いイメージは自らが背負うところだ。そこが現実の代理人と最も異なる部分である。

2020年12月3日

読書状況 読み終わった [2020年12月3日]

亡くなった彼の真実を探す旅。孔雀の羽根、記憶の泉、調香師、数学の問題…幾つかのキーワードから死者を訪ねる謎解きが始まる。
小川洋子さんの作品は、五感を研ぎ澄まして読むとより一層楽しむことができる。全ての物に対して存在を認めることが、この世界の入り口のチケットでもある。だから体調不安の時は馴染めない。

2020年11月23日

読書状況 読み終わった [2020年11月23日]

家庭裁判所調査官補として九州の福森家裁に配属された望月大地。心を開かない相談者たちを相手に、大地は真実に辿り着く為に奔走する。
家族のことは家族にしか本当のことは分からない。そして、片方を立てればもう一方は落ち込む。家裁調査官の仕事の難しさが伝わってくる。ただ、両者が真実を認識することと、未来の自分自身を想像してみることが大切だ。タイトルの意味がここにある。

2020年11月23日

読書状況 読み終わった [2020年11月23日]

"北陸の小京都"と呼ばれる町の高校生・雄大。トラブルで野球部を終われ、可愛い先輩に誘われるまま人力車部に入ることに。青春の煌めきと甘酸っぱさを描いた感動の物語。
お仕事小説も面白いけど、青春ものもなかなかの群像劇のスペシャリスト山本幸久さん。何かに打ち込む青春時代は美しい。特に年齢を重ねてくると、"若さ"って無限大の可能性を秘めていたことにやっと気づくのだ。

2020年11月15日

読書状況 読み終わった [2020年11月15日]

1995年3月20日、丸の内で起こった無差別乱射事件。カルト教団『シンラ智慧の会』による凶行の首謀者は、忌まわしき過去を背負う教祖・天堂光翅だった…。平成を揺るがすテロ事件が生み落とした絶望とかすかな希望を、幻想的かつスリリングに物語る衝撃作。
美しい蝶も、一匹ならのどかな平和を感じる。数えきれない大量の蝶が翔んでいると幻想的だが恐怖も感じる。美しさに潜む悪の影ほど、掴みきれない想いがある。

2020年11月15日

読書状況 読み終わった [2020年11月15日]
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