山月記・李陵 (集英社文庫)

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本棚登録 : 125
レビュー : 20
著者 :
izooさん 文庫本   読み終わった 

高校の授業で、「山月記」を始めて読み、
その独特な世界が心に残った。

今回、七つの短編・中編小説を集めたこの小説集を読んでみて、
シビアな現実と夢のように不思議な物語展開が両立していて、
ようやく「人間的な心情」を取り戻したのに、
その取り戻したものをいずれ喪うであろうことが予期される、
哀切なラストが印象的な「山月記」も
相変わらず好きな作品だと思ったし、
初めて読んだ「李陵」も、登場人物達の数奇な運命が、
時に激しく、時に静かに、
うねりのある筆で描かれていて、引き込まれたけれど、
一番心に残った作品は「弟子」だった。

まさしく「愚直」という言葉がふさわしいような、
不器用でまっすぐな男、子路の
師匠である孔子への一途なまでの忠実さや、
その一方で時より彼の考えに対して抱く疑問や反発、
そして壮絶な人生の物語は、自分の心を打った。
師匠である孔子が、彼の揺れる心の内や長所を理解し、
彼のそのまっすぐさを愛しているところも良かった。
子路が師匠を思う分、孔子もまた子路の、
一見欠点ともいえる不器用さを愛しているところに
救いを感じる。

読んでいる途中も、また読み終えた後も、
ただ切なくて、何か熱いもので胸を締め付けられ、
どうしていいかわからないけれど、泣きたくなってしまう作品。

レビュー投稿日
2011年5月17日
読了日
2011年5月17日
本棚登録日
2011年5月17日
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