フリークス (角川文庫)

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レビュー : 183
著者 :
相沢泉見さん  未設定  読み終わった 

表題作の『フリークス ―五六四号室の患者―』が一班ミステリ然としていた。『四〇九号室の患者』もオーソドックスで良い。『悪魔の手 ―三一三号室の患者―』は引き際が最高。
解説が道尾秀介さんなのも良かった。

・悪魔の手 ―三一三号室の患者―
浪人を繰り返す青年が、精神を病んで入院している母親の見舞いに訪れる……というていで話が始まる。
母親は突然父親を刺し殺し、青年までも殺そうとした。警察に捕まるも、心神耗弱で不起訴になり、病院に入院。
青年は母の病室に、鍵のかかった箱を持ち込む。鍵は母が持っていた。箱を開けると、中から日記のようなものが出てくる。どうやら青年が昔書いたもののようだが、青年地震には書いた記憶が全くない。日記の中で、少年時代の彼は何者かに何度も襲われかけ、苦しんでいる描写があった。
母は、青年に双子の兄がいたと言い出す……。
青年の心の奥底を覗く話と思ったら、最後の最後に「同じやり取りが何度も繰り返されていた」ことが分かり、驚愕。
精神病棟に入院しているのは青年で、「お見舞い」は青年にとってのいわば「ルーティン」みたいなものだった。
青年は日記を再び箱にしまい、病室へ戻っていく。

・四〇九号室の患者
患者は事故で顔と身体にひどい怪我を負っており、病室で日記をつけている。
ドライブの途中、夫と共に事故に遭い、自分だけ助かった。しかし、この記憶にはどこか違和感が残る。
そうこうしているうちに、夫の妹や、同僚の男性の面会がある。夫の同僚は、夫が派手な女と浮気していたのではないかという。
次第に、主人公は自分が妻ではなく、その浮気相手なのではないかと思うようになる。事故で顔が損傷し、医師も見分けがつかなくなってしまったのだ。本当の妻は、自分の手で殺してしまったのではないか……。
真相は、浮気相手など存在しない。浮気相手ではなく、妻が変装していた(夫婦関係のマンネリを打破する、などの理由で)。
浮気相手の名前だと思っていたのは、妻の名前のアナグラム。
しかし、入院しているのは妻ではない。実は事故で死んだのは妻。夫は助かったが、顔を損傷したうえ、下半身
切断になってしまった。
男性のシンボルを失ってしまった夫が、自分を女性=妻だと思い込んでいる、という話。

・フリークス ―五六四号室の患者―
作家の主人公の元に、精神科の女性医師から原稿が届く。ある病室の患者が書いた小説めいたものらしいが、結末まで書いていない。主人公はそれを「探偵」の友人に読ませる……という感じで話が始まる。
小説の舞台は特殊な館。あるじはJMというマッド・サイエンティスト。彼は身寄りのない子供を引き取り、その身体に改造を施してしまう。
一番上の姉は手足を切られ舌を抜かれた「芋虫」。他に、身体を屈められて小さくされた「傴僂」、目を一つ取られた「一つ目」、腕を余分に付け足された「三本腕」、身体を鱗で覆われた「鱗男」の5人が館にいる。
この館の一室で、あるじであるJMが殺され、遺体を切り刻まれた状態で発見される。
館の中にいたのはフリークスの五人。果たして犯人は誰か。
原稿はここで終わっていた。
探偵は作家の前で推理を語りはじめる。
JMが死んだ部屋に脱出口は二つ。入り口のドアと、高いところにある窓。
「芋虫」は部屋から出られないので除外。
ここで探偵は、遺体の傍にあった部屋の鍵が綺麗に洗われていたことに注目する。
血で汚れたくらいなら洗わなくてもいいはずなのに、何故洗ったか。答えは、鍵に「血以外の物」即ち胃液が付着していたから。
JMは犯人に折檻を加えるために部屋に引き込み、鍵を掛けた。そこで犯人がJMに反旗を翻す。瀕死の犯人は、鍵を飲み込んでしまう。
「傴僂」以外の者は、窓に手が届くので、ドアを締められてしまっても窓から逃げられる。
しかし「傴僂」はドアからしか出られず、胃から鍵を取り出すためにJMの身体を切り刻んだ……。
JM殺害についてはこれが真相。
しかし探偵は、「芋虫」以外のフリークス4人が、「作家の分身」であることを指摘する。
この原稿は、主人公である作家が父親を殺した時の事が描かれていた。
その作家こそ犯人で、精神科に入院している患者だった。

レビュー投稿日
2018年11月14日
読了日
2018年10月4日
本棚登録日
2018年11月14日
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