凍りのくじら (講談社文庫)

4.03
  • (1630)
  • (1748)
  • (1071)
  • (165)
  • (34)
本棚登録 : 12982
レビュー : 1581
著者 :
相沢泉見さん  未設定  読み終わった 

私はことあるごとにいろんな人に言ってるんですけど、
「この世の中のあらゆるフィクションに置いて、伏線の貼り方と回収の仕方が一番上手い話はドラえもん」だと思うんです。
特に大長編の方。
私が子供の頃一番初めに見た大長編ドラえもんは『魔界大冒険』でした。
冒頭で、のび太やどらえもんそっくりの謎の石像が出てきて、動いてるようにみえたりもして、なにこれ…と思うのですが、のちにそれがぴったり話に絡んできたときの驚きといったらなかった。
あとは『竜の騎士』も伏線と回収が見事な話だと思います。行方不明のスネ夫から始まり、謎の四角い空間のあたりとか。
上げたらきりがないんですけど、『日本誕生』や『パラレル西遊記』なども大好きで何度も見ました。
そして『天の川鉄道の夜』をミステリーと評していたように、ドラえもんは優れたミステリー作品でもあり、ギャグでもあり、童話のような訓示もあったり、家族や恋愛のことも書いてあるすごい話だと思うのです。
ドラえもんはこんなにすごいぞ、ということが文中にこれでもかと書いてあって、いちいち納得。
大長編といえば、もちろんこの話の中に出てきた『海底鬼岩城』も大好きです。子どもの頃はインパクトのあるキャラであるバギーちゃんに感情移入したのですが、この作品では触れられていませんでしたね。ストレートな魅力(バギーちゃん)を通り越した先の話をしてるあたりに、理帆子のドラえもんへの造詣の深さを感じたりしました。
藤子先生を呼ぶ時に「先生」をつけたくなるという部分もまったく同じです。

ドラえもんを抜きにした部分について。
若尾のキャラが嫌だった。
『鍵のない夢を見る』の『芹葉大学の夢と殺人』に出てきた雄大のような、悪いことはすべて世間のせいにして、自信過剰でそのくせ小心者のいやらしさ。
しかし主人公の理帆子はこんなダメキャラに救いを求めてしまうところが切ない。
そんな若尾を理帆子が吹っ切ろうとしてからの若尾の暴走は嫌だし怖かったです。
第7章には『ツーカー錠』というタイトルが付けられており、このツーカー錠というのは『心が通じ合う薬』なんですけど、若尾の想いが一方的にメールで送られてきて、理帆子が取り合わないさまは皮肉なタイトルだなぁと思いました。

別所あきらについて。
実は『光』と書いて『あきら』と読む知り合いがいるので、中盤で彼の正体に気が付いてしまった。
気が付いてから、二人がイタリアンレストランで食事したシーン(p89~)を読み直すとけっこう不気味ですよね。
物を食べるシーンが一人分しか書かれていなかったり、隣の席のカップルがチラチラ見てたり…。
プレゼントを買いに行くシーンがありますけど、あれは理帆子のお母さんへのプレゼントで、お父さんが北大に進学するときにお母さんに「付いてこないか」と頼んだとあり、その時にあげたのでしょうか(明示されてなかったように思いますが読み飛ばしてますかね?)。
理帆子と母親の家族愛についてはおまけ要素のようなものだとは思いますが、最後に決着がついてよかったと思います。

最後に郁也。
理帆子が彼につけた「スコシ・ナントカ」は明示されていませんでした。
いろんな方のレビューを拝見していてしっくりきたのは『スコシ・Family』と『スコシ・Flying』かなぁと思います。
それ以外で自分で考えたのは『スコシ・Future』です。
正解は何なんでしょうね。

メフィスト賞を取られた方の作品はどれもそうなんですが、長くて読みごたえがあります。
機会があれば次も読んでみたいと思います。

レビュー投稿日
2015年6月2日
読了日
2015年6月1日
本棚登録日
2015年6月2日
7
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『凍りのくじら (講談社文庫)』のレビューをもっとみる

『凍りのくじら (講談社文庫)』に相沢泉見さんがつけたタグ

いいね!してくれた人

ツイートする