友情 (新潮文庫)

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レビュー : 446
相沢泉見さん  未設定  読み終わった 

夏目漱石の「こころ」が暗~い三角関係の話なら、これはその対極にある三角関係の話だ……という感想をどこかで見ていたので、てっきり男二人が川原で殴り合いをした後スッキリ和解する話しかと思ったら全く違っていた……。

上篇で、初めから主人公・野島は杉子に一目ぼれをします。
もうそこから怒涛のように続く杉子age。杉子を勝手に聖女のように位置づけ、交際もしてないのに「結婚するならこの子だ」と思い込む。杉子への惚れっぷりが本当にすごい。
「新聞を見ても、雑誌を見ても、本を見ても、杉と云う字が目についた」
とかね。
あとはその杉子に変な手紙を寄越してちょっかいを出してくる男がまるで野島みたいな男で、野島は「あ、俺もこんな変な事してるかも」という自覚がありつつも、やっぱり変な手紙(プロポーズの)を出してしまうw
上篇は、本当になんというか野島が杉子をスキスキ言ってて余りに気持ち悪……いや一方的です。
ああでもこの時代って恋愛するのに女性の気持ちはあまり関係ないのかな…なんて騙されかけたんですけど、下篇を読んだらそんなことなかったwww 
ですよねー!

下篇では散々想いを寄せられていた杉子が野島のことをこれっぽっちも好いてなかったことが明らかになります。
杉子は
「野島さまは私と云うものをそっちのけにして勝手に私を人間ばなれしたものに築きあげて、そしてそれを勝手に賛美していらっしゃるのです」
と野島の愛のゆがみ具合をバッチリ指摘してる。
「死んでも結婚したくない」とか「どうしても野島さまのわきには一時間以上は居たくないのです」という衝撃的すぎる感想が出て来て吹き出しました。
そこまで言う?!

野島の友達の大宮は一生懸命友達のいいところを杉子に解くけど、結局は自分も杉子のことが好きなので自分の気持ちに正直に行くことにした。
大宮「もう万事きまったと自分では思った。これが罪ならば罪でもいいと思った」
この台詞で、もう大宮の勝ちです。
世界中を敵に回しても好きだと思ったら強い。
最後、振られた主人公の野島は人生にめげずに芸術の世界に生きて行くことに決めたようなのでまあ良かったのかなと思います。

それから、
話のあちこちから、この時代の若い人が「日本を強くしないと」という使命感を負っていて、みんな頑張っていたというのが読み取れました。そう言う時代だったんだなぁ。
あ、あと、随分昔に書かれた話なのに青空文庫に入っていないなと思ったら、武者小路先生はずいぶん長生きされた方なんですね。
昔に書かれた話ですが、現代の青春エンタメ小説ですと言ってもおかしくない、色褪せないストーリーだと思います。

レビュー投稿日
2015年9月15日
読了日
2015年9月13日
本棚登録日
2015年9月15日
3
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