死にたい夜にかぎって

著者 :
  • 扶桑社 (2018年1月26日発売)
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本棚登録 : 840
感想 : 79
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芸人の光浦靖子さんが、人の人生まで知りたいと思う余裕がないから、エッセイは読まない。小説がすきだ。と、どっかで語っていた。
わたしは気づくとエッセイばっかり読んでいる。手元にエッセイがないと落ち着かないほどである。
エッセイの魅力は、自分に重ね合わせて読んでいると、なんだか自分まで変われる気がしてしまうところだと私は思う。私は単純な人間だから、いろんなことに影響を受けまくって生きていて、そのなかでも活字で描写された人間の絵姿には特に弱い。リアルよりも映像よりも想像力を要する本というフォーマットは、自分にめちゃくちゃ重ねやすいのだ。

この本も、自分と重ねながら読んだ。
爪さんも、その彼女も、私とは全く違う人生の歩み方をしているのだけど、なかなか心にくる部分があって、長く余韻が続く一冊になりそうだ。

破壊的なエロスとか、精神病のカオスとか、いろんな闇が詰まってるけれど、ただただ愛しかない。帯の通りですが。
「女は花で、男は花瓶だと思う」このフレーズが、彼女に対する爪さんの愛とか優しさの根源なのだろう。
女同士で話していると、普段はどうってことなくても、いざというとき優しい人がいいよね~~って話になるんだけど、実は爪さんのような包容力を私たちはものすごく求めているような気がする。それは27歳になった今だから感じるのかもしれない。

最後の話を、実家から帰る特急電車の中で読んでいた。学芸大学駅あたりで別れのシーンを読み終えて、窓を見やると1年半前に暮らしていた駅を通過するところだった。
きっと一生、わたしはこの駅を通るたびに、私を捨てた彼のことを思い出す。それが呪いのようでつらかったんだけど、この本はそれでもいいんじゃない?って言ってくれるような本だった。

もし、この本をまだ読んでなくて買おうとしている人がいたら、ぜひ帯を味わってから読んでほしい。
この最高にかわいくてチープな本は、予想以上の破壊力と愛の込められた一冊だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 書籍
感想投稿日 : 2018年6月24日
読了日 : 2018年6月24日
本棚登録日 : 2018年6月24日

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